海上事故に起因する不法行為請求に仲裁合意の効力が及ぶとしたシンガポール最上級審判決
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 梶 原 啓
1 はじめに
海運実務においては複数の契約書類が絡み法律関係が単純ではないことも珍しくない。そのため、仲裁合意をめぐる論点については、海事法の分野において重要な法原則や判例の展開がみられ、それがその後に海事に限らず仲裁実務一般の指針となることがある。シンガポール最上級審の上訴裁判所による2024年11月13日付け判決[1](以下「本判決」という)は、船舶が橋に衝突した事案に関して、契約に基づかない不法行為請求がどのような場合に仲裁合意の対象になるかという論点を検討した。本判決は仲裁合意についてのシンガポールの裁判所のアプローチを示す重要な判決である。
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(かじわら・けい)
国際商事仲裁及び投資協定仲裁をはじめとする国際紛争解決を扱う。日本国内訴訟にも深く関与してきた経験をいかし、アジアその他の地域に展開する日系企業と協働して費用対効果に優れた複雑商事紛争処理に尽力する。2013年弁護士登録(第一東京弁護士会)、長島・大野・常松法律事務所入所。2019年ニューヨーク大学ロースクール修了(LL.M. in International Business Regulation, Litigation and Arbitration; Hauser Global Scholar)。Jenner & Block LLPでの勤務を経て、2021年1月から長島・大野・常松法律事務所シンガポール・オフィスにおいて勤務開始。
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