- SH4687 最三小判 令和5年5月9日 納骨堂経営許可処分取消、納骨堂経営変更許可処分取消請求事件(林道晴裁判長)
墓地、埋葬等に関する法律10条の規定により大阪市長がした納骨堂の経営等に係る許可の取消訴訟と納骨堂の周辺住民の原告適格
- SH4666 最三小判 令和5年6月27日 懲戒免職処分取消、退職手当支給制限処分取消請求事件(長嶺安政裁判長)
最三小判 令和5年6月27日 懲戒免職処分取消、退職手当支給制限処分取消請求事件(長嶺安政裁判長)
【判示事項】
1 職員の退職手当に関する条例(昭和28年宮城県条例第70号。令和元年宮城県条例第51号による改正前のもの)12条1項1号の規定により一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分の適否に関する裁判所の審査
2 職員の退職手当に関する条例(昭和28年宮城県条例第70号。令和元年宮城県条例第51号による改正前のもの)12条1項1号の規定により公立学校教員を退職した者に対してされた一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分に係る県の教育委員会の判断が、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとはいえないとされた事例
【判決要旨】
1 裁判所が退職手当支給制限処分の適否を審査するに当たっては、退職手当管理機関と同一の立場に立って、処分をすべきであったかどうか又はどの程度支給しないこととすべきであったかについて判断し、その結果と実際にされた処分とを比較してその軽重を論ずべきではなく、退職手当支給制限処分が退職手当管理機関の裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、当該処分に係る判断が社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合に違法であると判断すべきである。
退職手当支給制限処分:職員の退職手当に関する条例(昭和28年宮城県条例第70号。令和元年宮城県条例第51号による改正前のもの)12条1項1号の規定により一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分
2 酒気帯び運転を理由とする懲戒免職処分を受けて公立学校教員を退職した者が、職員の退職手当に関する条例(昭和28年宮城県条例第70号。令和元年宮城県条例第51号による改正前のもの)12条1項1号の規定により、県の教育委員会から、一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分を受けた場合において、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、上記処分に係る上記教育委員会の判断は、上記の者が管理職ではなく、上記懲戒免職処分を除き懲戒処分歴がないこと、約30年間にわたって誠実に勤務してきており、反省の情を示していること等を勘案しても、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえない。
⑴ 上記酒気帯び運転の態様は、自家用車で酒席に赴き、長時間にわたって相当量の飲酒をした直後に、同自家用車を運転して帰宅しようとしたところ、運転開始から間もなく、過失により走行中の車両と衝突し、同車両に物的損害を生じさせる事故を起こすというものであった。
⑵ 上記の者が教諭として勤務していた高等学校は、上記酒気帯び運転の後、生徒やその保護者への説明のため、集会を開くなどの対応を余儀なくされた。
⑶ 上記教育委員会は、上記酒気帯び運転の前年、教職員による飲酒運転が相次いでいたことを受けて、複数回にわたり服務規律の確保を求める通知等を発出するなどし、飲酒運転に対する懲戒処分につきより厳格に対応するなどといった注意喚起をしていた。
(2につき、反対意見がある。)
【参照法条】
職員の退職手当に関する条例(昭和28年宮城県条例第70号。令和元年宮城県条例第51号による改正前のもの)12条1項1号
【事件番号等】
令和4年(行ヒ)第274号 最高裁判所令和5年6月27日第三小法廷判決
懲戒免職処分取消、退職手当支給制限処分取消請求事件
破棄自判
原 審:令和4年(行コ)第1号 仙台高裁令和4年5月26日判決
原々審:令和元年(行ウ)第26号 仙台地裁令和3年12月2日判決
【判決文】
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92170
- SH4651 最三小決 令和5年3月29日 債権差押命令に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件(今崎幸彦裁判長)
最三小決 令和5年3月29日 債権差押命令に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件(今崎幸彦裁判長)
【判示事項】
第三債務者が差押命令の送達を受ける前に債務者との間で差押えに係る金銭債権の支払のために電子記録債権を発生させた場合において、上記差押えに係る金銭債権について発せられた転付命令が第三債務者に送達された後に上記電子記録債権の支払がされたときの上記転付命令の効力
【決定要旨】
第三債務者が差押命令の送達を受ける前に債務者との間で差押えに係る金銭債権の支払のために電子記録債権を発生させた場合において、上記差押えに係る金銭債権について発せられた転付命令が第三債務者に送達された後に上記電子記録債権の支払がされたときは、上記支払によって民事執行法160条による上記転付命令の執行債権及び執行費用の弁済の効果が妨げられることはない。
【参照条文】
民事執行法159条、160条
【事件番号等】
令和4年(許)第13号 最高裁判所令和5年3月29日第三小法廷決定
債権差押命令に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件 民集77巻3号登載予定
破棄差戻し
原 審:令和4年(ラ)第108号 福岡高等裁判所令和4年5月31日決定
原々審:令和4年(ル)第169号 福岡地方裁判所令和4年1月31日命令
【判決文】
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=91990
- SH4643 最一小決 令和5年1月30日 検察官がした刑事確定訴訟記録の閲覧申出一部不許可処分に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件(安浪亮介裁判長)
最一小決 令和5年1月30日 検察官がした刑事確定訴訟記録の閲覧申出一部不許可処分に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件(安浪亮介裁判長)
【判示事項】
地方検察庁に属する検察官が区検察庁検察官事務取扱いとして保管記録の閲覧に関する処分をした場合と刑事確定訴訟記録法8条1項にいう「保管検察官が所属する検察庁の対応する裁判所」
【決定要旨】
地方検察庁に属する検察官が区検察庁の検察官の事務取扱いとして保管記録の閲覧に関する処分をした場合、当該区検察庁の対応する簡易裁判所は、刑事確定訴訟記録法8条1項にいう「保管検察官が所属する検察庁の対応する裁判所」に当たる。
【参照条文】
刑事確定訴訟記録法2条1項、8条、検察庁法12条
【事件番号等】
令和4年(し)第594号 最高裁判所令和5年1月30日第一小法廷決定
検察官がした刑事確定訴訟記録の閲覧申出一部不許可処分に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件 取消差戻し
原 審:令和4年(る)第1号 東京簡易裁判所令和4年8月2日決定
【判決文】
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=91726
【解説文】
- SH4633 最一小判 令和5年3月9日 マイナンバー(個人番号)利用差止等請求事件(深山卓也裁判長)
行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(令和3年法律第36号による改正前のもの)に基づき特定個人情報(個人番号をその内容に含む個人情報)の収集、保管、利用又は提供をする行為と憲法13条
- SH4627 最二小判 令和5年3月24日 共有持分移転登記手続請求事件(尾島明裁判長)
Xは、第1審において、いわゆる調書判決(民訴法254条1項)の方式により、自己の請求を全部認容する旨の判決を受けたが、その判決は弁論を終結した口頭弁論に関与していない裁判官が言い渡したものであり、民訴法249条1項(直接主義)に違反するものであった。そこで、Xは、第1審判決を取り消し、改めて自己の請求を全部認容する判決を求めて控訴をしたところ、原審は、Xの請求は全部認容されているから、控訴の利益が認められず、本件控訴は不適法であるとして、これを却下した。これに対し、Xが上告受理申立てをした。
本判決は、裁判要旨のとおり判示して原判決を破棄し、本件を原審に差し戻した。
2 説明
⑴ 民訴法は、判決手続について、①判決は、その基本となる口頭弁論に関与した裁判官がする(同法249条1項)、②判決の言渡しは、判決書の原本に基づいてする(同法252条)ことなどを定めている。「基本となる口頭弁論に関与した裁判官」とは、弁論を終結した口頭弁論期日の審理に関与した裁判官をいう(兼子一『条解民事訴訟法〔第2版〕』(2011、弘文堂)1391頁〔竹下守夫=上原敏夫〕)。上記審理に関与した裁判官により判決書の原本が作成されていれば、その原本を他の裁判官が代読することにより判決を言い渡すことは何ら問題がない。
ところで、当事者間に自白が成立するなどの一定の事由がある場合には、いわゆる調書判決の方式により判決を言い渡すことができる(民訴法254条1項本文)。これは、原本に基づく判決の言渡し(上記②)の例外を定めたものであり、この場合であっても民訴法249条1項の規定(上記①)が適用されることに変わりはない。そして、調書判決の場合、判決書原本は存在せず、調書判決を言い渡した裁判官が判決をしたことになるから、弁論を終結した口頭弁論期日の審理に関与していない裁判官が調書判決を言い渡したときは、その判決手続には民訴法249条1項違反があることになる。そして、判決手続が民訴法249条1項に違反する判決には、「法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと」という再審事由(同法338条1項1号)があることにもなる。
⑵ 上訴は、未確定の原裁判の取消し又は変更を上級裁判所に対して求める当事者の訴訟行為である。上訴の目的は、①当事者の救済、②法令解釈の統一にあるとされ、上訴が適法であるためには、原裁判により当事者が不利益を受けたこと、すなわち上訴の利益が必要であると解されている(前掲・兼子1522、1525頁〔松浦馨=加藤新太郎〕)。そして、上訴の利益の判断基準については、請求の趣旨と判決主文とを比較し、後者が前者に満たない場合に上訴の利益を認めるという形式的不服説が通説(伊藤眞『民事訴訟法〔第7版〕』(2020、有斐閣)733頁、上田徹一郎『民事訴訟法〔第7版〕』(2011、法学書院)596頁ほか)・判例(最三小判昭和31・4・3民集10巻4号297頁)である。
形式的不服説によれば、全部勝訴者には原則として上訴の利益は認められないことになる。もっとも、形式的不服説も、例外を一切認めないものではなく、例えば、予備的な相殺の抗弁が認められて請求棄却判決を受けた被告が上訴をする場合(前掲・上田597頁)や、第1審判決を取り消し、事件を第1審に差し戻す旨の控訴審判決を受けた控訴人が取消理由に不服があるとして上告をする場合(最一小判昭和45・1・22民集24巻1号1頁)等については、全部勝訴者であっても例外的に上訴の利益が認められるとしている。
⑶ ただし、本件のように民訴法249条1項違反がある第1審判決に対して全部勝訴者が控訴をする場合に形式的不服説の例外として控訴の利益が認められるかについては、これまでの判例・学説上も明らかではなかった。なお、この点に関して参考になり得る議論としては、相手方(敗訴者)に代理権欠缺の瑕疵がある場合(民訴法338条1項3号)、将来、相手方から再審の訴えを提起され、確定判決が取り消されるおそれがあることをもって全部勝訴者にも例外的に上訴の利益を認めるべきであるとする見解がある(斎藤秀夫ほか『注解民事訴訟法⑼〔第2版〕』(1996、第一法規出版)478頁〔斎藤秀夫=奈良次郎〕、秋山幹男ほか『コンメンタール民事訴訟法Ⅵ』(2014、日本評論社)291頁等)。
これを本件についてみると、第1審の判決手続に民訴法249条1項違反がある場合、第1審判決には再審事由(同法338条1項1号)があることになり、将来、相手方が再審の訴えを提起すれば、再審の訴えの適法要件を満たす限り、再審開始決定がされ、その結果、確定判決が取り消されるおそれが生ずることになる。そして、判決手続に民訴法249条1項違反があることは、唯一の証拠方法である口頭弁論調書(同法160条3項参照)により直ちに判明する事柄である。このような第1審判決をもって紛争が最終的に解決されるということはできないのであって、これは全部勝訴者にとっても不利益な判決であるということができる。本判決は、以上のようなことから、第1審の判決手続に民訴法249条1項違反がある場合、全部勝訴者であっても、形式的不服説の例外として控訴の利益を認めるのが相当であると判示したと思われる。
⑷ このように本判決を理解することが、これまでの伝統的な通説・判例の枠組みに沿うものであり、自然な解釈であるともいえるが、他方において、本判決は、第1審判決には民事裁判の根幹に関わる重大な違法(民訴法249条1項違反)があることも理由として挙げ、結論において控訴の利益の有無に言及することなく、端的に全部勝訴者であっても控訴を提起することができると説示している。このことは、判決手続に民事裁判の根幹に関わる重大な違法である民訴法249条1項違反がある場合には、控訴の利益の有無を問うまでもなく、それ自体をもって控訴を適法と解する余地があることを示唆しているともいえようか。最三小判平成24・1・31集民239号659頁は、処分権主義違反のある第1審判決に対し全部勝訴者と評価し得る者からされた控訴を適法と認めた事案であり、同最判をどのように理解するかは学説上も評価が分かれているものの、本件の参考になり得る。
- SH4623 最一小決 令和4年7月27日 検察官がした押収物の還付に関する処分に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件(堺徹裁判長)
捜査機関による押収処分を受けた者の還付請求が権利の濫用として許されないとされた事例
- SH4622 最一小決 令和4年12月5日 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和37年東京都条例第103号)違反被告事件(安浪亮介裁判長)
スカート着用の前かがみになった女性に後方の至近距離からカメラを構えるなどした行為が、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和37年東京都条例第103号)5条1項3号にいう「人を著しく羞恥させ、人に不安を覚えさせるような卑わいな言動」に当たるとされた事例
- SH4605 最二小判 令和5年5月19日 3番所有権抹消登記等請求事件(岡村和美裁判長)
1 遺言執行者は、共同相続人の相続分を指定する旨の遺言を根拠として、平成30年法律第72号の施行日前に開始した相続に係る相続財産である不動産についてされた所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴えの原告適格を有するか
2 相続財産の全部又は一部を包括遺贈する旨の遺言がされた場合における、上記の包括遺贈が効力を生じてからその執行がされるまでの間に包括受遺者以外の者に対してされた不動産の所有権移転登記の抹消登記手続又は一部抹消(更正)登記手続を求める訴えと遺言執行者の原告適格
3 複数の包括遺贈のうちの一つがその効力を生ぜず、又は放棄によってその効力を失った場合における、その効力を有しない包括遺贈につき包括受遺者が受けるべきであったものの帰すう
- SH4604 最一小判 令和5年3月2日 動産引渡等請求事件(山口厚裁判長)
いわゆる弁済受領文書の提出による強制執行の停止の期間中にされた執行処分の効力