フィリピン:小売自由化法を改正する法律の成立
――外資規制の大幅緩和(1)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 坂 下 大
2021年7月の拙稿において、フィリピンにおける小売自由化法(the Retail Trade Liberalization Act of 2000)の改正動向を紹介した(SH3698 小売業に関する外資規制の改正動向続報(1)及びSH3699 小売業に関する外資規制の改正動向続報(2))。小売業における外資規制を大幅に緩和する方向での改正法案の国会審議が当時最終段階を迎えつつあったところであるが、その後両院協議会における同改正法案の最終案作成、同年9月の上院、下院での最終承認を経て、12月10日にドゥテルテ大統領による署名がなされ、ついに小売自由化法を改正する法律(共和国法11595号。以下「改正法」という。)が成立するに至った。
フィリピンでは長らく小売業への外資参入が完全に禁止されており、2000年に施行された小売自由化法の下でも比較的厳しい外資規制が設けられていたため、小売業への参入を検討しつつもこれを見送ったり、フランチャイズやライセンス等の他の手法を模索したりする外国投資家の例も見られたところである。今般の改正によって、外資参入時に求められる資本金や投資額の水準が引き下げられ、また既にフィリピン国外で小売業の実績のある大規模な事業者でないと充足が困難であった各種要件が撤廃される等、これまでの高い参入障壁が大幅に緩和されることから、外国投資家にとってはフィリピン小売業への投資を改めて検討する契機になり得ると思われる。そこで本稿では、改正法による小売自由化法の主な改正ポイントを紹介する。なお、改正前の内容や、上院法案(1840号)の内容が改正法でも維持されている箇所は前掲の拙稿でも紹介済みであるが、一覧性の観点から重複を厭わず本稿でも改めて記載している。
改正前 | 改正後 |
1. 払込資本金要件 |
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2. 投資額要件 |
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3. 株式公開義務 |
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(2)につづく
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(さかした・ゆたか)
2007年に長島・大野・常松法律事務所に入所し、クロスボーダー案件を含む多業種にわたるM&A、事業再生案件等に従事。2015年よりシンガポールを拠点とし、アジア各国におけるM&Aその他種々の企業法務に関するアドバイスを行っている。
慶應義塾大学法学部法律学科卒業、Duke University, The Fuqua School of Business卒業(MBA)。日本及び米国カリフォルニア州の弁護士資格を有する。
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