SH4252 消費者庁、「ステルスマーケティングに関する検討会報告書(案)」の公表および意見募集 臼杵善治/久米野乃香(2022/12/22)

取引法務表示・広告規制

消費者庁、「ステルスマーケティングに関する検討会報告書(案)」の公表および意見募集

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 臼 杵 善 治

弁護士 久 米 野乃香

 

1 はじめに

 近年の消費生活のデジタル化の進展に伴い、インターネット広告市場は著しい拡大傾向にあり、特にSNS上で展開される広告はその傾向が顕著である。他方で、広告主が自らの広告であることを隠したまま広告を出稿するなどのいわゆるステルスマーケティングについては、現状、表示内容に優良誤認・有利誤認がない限り、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)における規制対象とはされておらず、ステルスマーケティングによる不適切な表示による問題がより一層顕在化している。

 このような状況を踏まえ、消費者庁を事務局とし、民間の有識者で構成されるステルスマーケティング検討会(以下「本検討会」という。)は「ステルスマーケティングに関する検討会報告書(案)」[1](以下「報告書(案)」という。)を作成し、2022年12月2日、報告書(案)は意見募集に付された。

 報告書(案)は、全7回にわたる本検討会の検討および議論を踏まえ、ステルスマーケティングの実態調査の結果や現行景品表示法の規制内容、ステルスマーケティングに対する景品表示法による規制の必要性、規制の具体案、運用方針等を報告するものである。本稿では、報告書(案)において、ステルスマーケティング規制として導入が検討されている景品表示法5条3号告示案および運用基準案の概要を紹介する。

 

 

出典:報告書(案)25頁 図11

2 景品表示法5条5号告示案

 ⑴ ステルスマーケティングに対する景品表示法による規制の必要性

 景品表示法は、「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為」を規制することを目的とする(景品表示法1条)。本検討会事務局による実態調査によれば、一般消費者は広告であることが明示されている場合警戒心を抱くのに対し、広告であるにもかかわらず広告であることを隠すステルスマーケティングは、一般消費者に誤認を生じさせるとともに、中立的な第三者の純粋な感想や口コミと思わせることで、一般消費者を誘引しやすく、一般消費者の商品選択における自主的かつ合理的な選択を阻害するものであるという広告代理店、PR会社からの回答が紹介されている[2]

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(うすき・よしはる)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2003年慶應義塾大学法学部卒業。2006年慶應義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(第一東京)。2015年University of London, LL.M. in Competition Law修了。公正取引委員会による審査手続対応、海外当局による調査手続対応、国内外の競争法当局に対する企業結合届出のサポート、競争法コンプライアンスマニュアル作成・競争法コンプライアンストレーニング、流通取引規制に関するアドバイス、景品表示法対応等の多数の案件を取り扱っている。

 

(くめ・ののか)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2018年神戸大学法学部卒業。2020年京都大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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