文化庁、文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第4回)
-AIと著作権に関する考え方について(骨子案)-
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 井 上 乾 介
弁護士 福 井 佑 理
弁護士 吉 田 崇 裕
1 はじめに
令和5年11月20日、文化庁の第23期著作権分科会法制度小委員会(以下「本委員会」という。)の第4回会合が開催された[1]。著作権分科会では生成AIと著作権に関する論点整理が主な検討課題の1つとして挙げられている[2]。本委員会の第1回では、「AIと著作権に関する論点整理について」[3]などの資料に基づく生成AIに関する論点整理が、第2回では有識者に対するヒアリングが行われた。また、第3回では、有識者からのヒアリングがなされるとともに、生成AIに関する各国の対応状況についての情報共有が行われた[4]。本委員会の第3回に関する詳細は、筆者らによる、「文化庁、文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第3回)――『生成AIに関する各国の対応について』および有識者ヒアリング――」[5](以下「前稿」という。)を参照されたい。
本稿では、本委員会の第4回会合で公表された「AIと著作権に関する考え方について(骨子案)」[6](以下「本資料」という。)の「5.各論点について」の内容を紹介する。
2 学習・開発段階における著作権法上の論点
⑴ 著作権法30条の4の要件
前稿でも述べたとおり、生成AIにおける著作権法30条の4の権利制限規定の適用範囲については高い関心が寄せられている。
著作権法30条の4 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。 (以下略) |
本資料では、同条に関して特に重点的に議論すべき論点として、「非享受目的」およびただし書の「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」を挙げる。
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(いのうえ・けんすけ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。
(ふくい・ゆり)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2007年一橋大学法学部卒業。国内出版社勤務。2013年東京大学法科大学院卒業。2014年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2020年King’s College London(LLM)修了。
(よしだ・たかひろ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2018年東京大学工学部卒業。2020年東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻修士課程修了。2022年弁護士登録(第二東京弁護士会)。
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