シンガポール:SICCによる「訴訟-調停-訴訟プロトコル」の導入(下)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 青 木 大
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紛争解決における調停の有効性については、近時注目されているところである。SIMCによれば、SIMC調停における和解の成功率は70~80%に及ぶという。SIMCにおける調停件数は近年大きく増加し、2021年に生じた調停案件の係争額の合計額は、SIMC設立以後7年間(2014年~2020年)の合計係争額30億米ドルと同程度となり、2022年には更に48.4億米ドルに増加したとのことである。
訴訟や仲裁による紛争解決の前に、調停を行うことを当事者に義務づけるいわゆる調停前置条項は実務上これまでもよく用いられている。「訴訟-調停-訴訟プロトコル」は、一旦まず訴訟提起を行う必要があるという点が異なるが、前述の執行力の点に加え、①訴訟提起を一旦行うことで、当事者の紛争解決への本気度がより一層示され、②訴訟提起に当たって当事者が自らの主張を整理し、その法的な強弱を把握した上で調停における和解協議に臨むことができ、③8週間という期間が区切られ、その後は訴訟に移行するというプレッシャーの下、調停による早期和解合意の形成がより促進されるという利点も考えられる。
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(あおき・ひろき)
2000年東京大学法学部、2004年ミシガン大学ロースクール(LL.M)卒業。2013年よりシンガポールを拠点とし、主に東南アジア、南アジアにおける国際仲裁・訴訟を含む紛争事案、不祥事事案、建設・プロジェクト案件、雇用問題その他アジア進出日系企業が直面する問題に関する相談案件に幅広く対応している。
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