◇SH1951◇ベトナム:新PPP政令の概要(2) 澤山啓伍(2018/07/06)

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ベトナム:新PPP政令の概要(2)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 澤 山 啓 伍

 

 本稿では、前稿に続き、2018年5月4日、ベトナム政府が公布した官民連携(PPP:Public Private Partnership)に関する新たな政令第63/2018/ND-CP号(以下「新政令」という)の内容について、新政令にしたがったPPP案件の計画段階から実施のための契約締結までの流れに沿って、旧政令と比較しながら概説している。

 

 (4) 事業化調査レポート(以下「FSレポート」という。)の作成、評価及び承認

 投資方針決定後、FSレポートの作成・評価が行われる。FSレポートは、原則として引き続き所轄の政府機関により行われるが、民間提案型の場合には提案を行った民間事業者に委託され、ハイテク案件の場合は入札によりレポートを作成する事業者が選定される。民間提案型の場合でFSレポートが承認されないときには、その作成費用は民間事業者が負担するものとされている。

 FSレポートの評価は、国家レベルの案件については国会審査委員会により、その他の案件については所轄の政府機関の下にあるPPP活動管理局により行われる。

 その後、国家レベルの案件については首相、その他の案件については所轄の政府機関の長によりFSレポートが承認される。

 

(5) 民間事業者の選定

 FSレポートが承認されると、次にその案件を実施する民間事業者の選定が行われる。

 旧政令でも新政令でも、投資家の選定は入札法に基づいて入札で行われるのが原則とされている。旧政令では、直接指名による投資家の選定がありうる旨記述されていたが、新政令ではその文言が削除され、単に「入札法に基づいて選定される」と規定されている。しかしながら、入札法にも直接指名による選定の規定はあるため、それを排除する趣旨ではないものと思われる。

 なお、FSレポートを作成した投資家は、入札において有利に取り扱われる旨の規定が置かれているが、その具体的な方法は定められていない。

 

(6) プロジェクト会社の設立

 PPP案件の実施者として選定された民間事業者は、BT形式の案件や小規模案件の場合を除き、案件実施のための特別目的会社(以下「事業会社」という。)を設立することが要求されている。

 事業会社の設立に当たっては以下の点に留意が必要である。

  1.  投資登録証の要否
  2.   現在の投資法では、外国投資家がベトナム国内で現地法人を設立する場合には投資登録証の取得が必要となる。旧政令では、事業会社の設立に当たり、投資登録証の取得が要求されていたが、新政令では投資登録証に関する言及が削除されている。新政令では、「事業会社の設立のための書類と手続は、企業法の規定に従う」と規定されているのみである。新政令の公布までの経緯や報道によれば、これは事業会社の設立については投資登録証の取得を不要とするという意図を示しているものと考えられる。

(次項に続く)

 

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