タイ:薬事法の改正
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 箕 輪 俊 介
2019年4月16日、薬事法の改正法が公布された。この改正法は公布日の180日後である2019年10月13日より施行される。今般の改正の主たる目的は医薬品の承認手続の効率化と消費者保護にあるが、改正内容のうち、主要な点につき以下解説したい。
医薬品の承認手続の最適化
医薬品の承認手続を円滑かつ迅速に進めるための方策として、従前より軍事政権下の命令にて以下が規定されていたものの、改正法により改めて法令上の手続として以下の内容が規定される。
- • 承認手続の一部外部委託:
- 従前は当該手続を規制当局である食品医薬品承認局(Food and Drug Administration(FDA))内部で全て進めていたが、効率化を進めるために、一部外部委託できる手続(学術書類の評価、製品分析、施設調査等)については、FDAにより承認・登録がなされた国内又は国外の外部の専門家に外部委託することが可能となる。外部委託にあたっての基準・手続等は下位規則により制定される。
医薬品の承認申請における提出書類の追加
改正法により、医薬品の承認申請にあたり、以下の書類の提出が追加で求められるようになる。
- • 近代医薬:関連する特許又は小特許に関する情報を記載した書類
- • 伝統医薬:タイの伝統医薬に関する権利の登録を証する書類
医薬品の承認の有効期間
改正法の施行前は、医薬品承認につき有効期間は定められていなかった。改正法の施行後は、7年毎の更新が必要となる。承認の有効期間が満了した場合、承認を受けている者は1ヶ月の猶予期間内に更新手続を申請できる。
改正法施行前に承認を受けている医薬品承認の有効期間は、以下のとおりとなる。
- • 1997年1月1日より以前に承認を受けている医薬品:
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2014年10月13日まで
- • 1997年1月1日から2007年12月31日までに承認を受けている医薬品:
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2026年10月13日まで
- • 2008年1月1日から2019年12月31日までに承認を受けている医薬品:
- 2028年10月13日まで
薬品研究に関する管理体制の強化
改正法により、下記のとおり、薬品研究に関する管理体制が強化される。
- • 管轄当局である保健省に対して、薬品研究に関する手続等を規律する規則を制定する権限が付与される。
- • FDAは、保健省が制定するガイドラインに違反した薬品研究に対して一時停止命令や改善命令等を課すことができる。
- • FDAは、上記命令に応じない者に対して10万バーツ以下の罰金を課すことができる。