◇SH0154◇インド:建設開発事業への外国直接投資規制の緩和 山本 匡(2014/12/02)

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インド:建設開発事業への外国直接投資規制の緩和

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 山 本   匡

(1)外国直接投資規制

 インドでは、1999年外国為替管理法(Foreign Exchange Management Act, 1999)を根拠法として、外国直接投資(foreign direct investment)に対する規制が行われている。従来、厳しい外国直接投資規制が課されてきた産業等もあるが、徐々に規制は緩和され、現在においては大多数の産業について自由化されている。

 外国直接投資規制の詳細な内容(FDI Policy)は、商工省(Ministry of Commerce and Industry)の産業政策推進局(Department of Industrial Policy and Promotion)が策定しており、同局のウェブサイト(http://dipp.nic.in/English/default.aspx)から入手することができる。

(2)建設開発事業

 インドでは不動産事業(real estate business)に対する外国直接投資は完全に禁止されているものの、建設開発事業(construction and development)への外国直接投資は、従来から100%まで政府の事前の承認なく行うことが認められていた。しかしながら、最低開発面積や最低出資額、最低出資継続期間(出口規制)等の様々な規制が課されていた。

 インド内閣は、2014年10月29日に、建設開発事業への規制の改正を承認したことをプレス・リリースにより公表した。様々な内容の改正が含まれているが、主要な改正概要は以下の通りである。

① 最低開発面積

 従来、宅地開発については土地面積(land area)10ヘクタール、建設開発プロジェクトについては建築面積(built-up area)5万平方メートルの最低開発面積が要求されていたが、前者につき規制が廃止され、後者につき床面積(floor area)2万平方メートルに改正される。複合プロジェクトについてはいずれかの要件を満たせばよい。

② 最低出資額

 従来、外国企業の完全子会社の場合は1,000万米ドル、インド企業との合弁会社の場合は500万米ドルの最低出資額が必要であったが、いずれについても最低出資額が500万米ドルに緩和・統一される。

 また、最低出資額の出資期限につき、従来、会社の事業開始から6ヶ月以内と定められていたところ、何をもって会社の事業開始というのか不明であった。この点が、プロジェクト開始から6ヶ月以内と改正され、プロジェクト開始とは、関連当局が建築計画・レイアウト計画を承認した日と定められている。

 加えて、最低出資額の出資後の追加の外国直接投資は、プロジェクト開始から10年又はプロジェクトの完成のいずれか早い時点まで行うことができる。新しく加えられた規定である。

③ 最低出資継続期間等(出口規制)

 従来、当初出資額については、最低出資額の投資から3年間引き上げてはならず、3年間のロック・イン期間は、各外国直接投資の受領日又は最低出資額の投資日のいずれか遅い方から適用される等の出口規制があった。新規制では、投資家は、基幹インフラが開発されていれば、プロジェクトの完成時又は最終投資日から3年経過時に退出することができる(ただし、基幹インフラや、プロジェクトの完成の意味等、不明点が残る。)。

 また、プロジェクト完成前であっても、政府の個別審査・承認を得て外国直接投資の引上げや他の非居住者投資家への持分譲渡を行うことができる。

④ 開発期限

 従来、法令上の許認可の取得日から5年以内にプロジェクトの50%以上の開発を行わなければならない旨の規制があったが、これが廃止された。

⑤ その他

 上記の他、プロジェクト費用総額の30%以上を低価格住宅(low-cost affordable housing)に費やすインドの会社については、上記①及び②が適用されないという免除が新設される。また、従来の規制と類似して、ホテル等についても一定の適用免除が定められている。

 さらに、住宅やショッピング・モール、ビジネス・センターの運営のための、完成したプロジェクトへの外国直接投資も、100%まで政府の事前承認なく行うことができる旨が定められている。

(3)プレス・ノート

 インド内閣は建設開発事業への規制緩和を承認したが、プレス・リリースで公表したのみである。従来の外国直接投資政策(FDI Policy)を改正するためのプレス・ノートは、2014年11月18日現在、産業政策推進局により公表されておらず、これが待たれる。また、新規制上、必ずしも明確でない点等が残っており、規制内容・解釈の明確化が求められよう。

 

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