◇SH0236◇中国:企業人員削減規定(パブリックコメント)に関する通知について 德地屋圭治(2015/03/03)

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中国:企業人員削減規定(パブリックコメント)に関する通知について

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 德地屋 圭 治

 中国における人員削減については、中華人民共和国労働契約法第41条が規律しており、それを受けて、「経済上の理由に基づく企業による人員削減に関する規定」(以下「旧規定」)が定められ、人員削減に関し詳細な手続を規定しているが、中国人力資源社会保障部は、企業による人員削減行為に基準を設け、労働者及び企業の合法的権利を保護するため、労働契約法に基づき、2014年12月31日から2015年1月31日までの間、旧規定に代わる規定として、「企業人員削減規定」案を作成し、パブリックコメントの募集を実施した。パブリックコメントは既に締め切られており、それを踏まえて、今後、「企業人員削減規定」最終案が公表されると考えられるが、新たな規定は、中国に進出した日本企業の労務管理に重要な影響を及ぼしうるものであるため、本稿で紹介することとしたい。

1 「企業人員削減規定(パブリックコメント)」の内容

 「企業人員削減規定(パブリックコメント)」の主要な内容は、以下のとおりである。

①   適用範囲
 労働契約法第41条第1項の事由(企業破産法の規定による再編の実施、生産経営に対する重大な困難等人員削減を要する事由)が生じ、20人以上、又は20人未満であるが全労働者の10%以上の人員を削減する場合、本規定を適用する(第3条)。

②   人員削減の回避又は削減対象人員の減少のための協議
 企業は、人員削減を要する事由が生じた場合、人員削減前に労働組合又は労働者代表と協議し、可能な限り人員削減を回避し、又は削減対象となる人員を減少させるための措置をとることができる(第5条)。

③   事前説明
 企業が人員削減の回避又は削減対象人員の減少のための措置をとった後においても人員削減を実施する必要がある場合は、30日前までに労働組合又は労働者全体に対し、人員削減を要する事由、その発生原因、生産経営の状況などについて説明しなければならない(第7条)。

④   人員削減にかかる初期的提案
 企業は、労働組合又は労働者全体に対し説明を行った後、人員削減にかかる初期的提案(人員削減の根拠となる法定事由、削減範囲、削減対象となる人員の選択基準等)を提出しなければならない(第8条)。

⑤   意見聴取及び人員削減提案の公表
 企業は、労働組合又は労働者から、人員削減にかかる初期的提案に関する合理的意見を聴取したうえ、これを修正し完成した後に、人員削減提案及び削減対象人員名簿を確定し公表しなければならない(第9条)。

⑥   人員削減報告
 企業は、人員削減提案を確定した後、当地の人力資源社会保障行政部門に書面で人員削減報告(人員削減提案、削減対象人員の名簿等を含む。)を提出しなければならない(第11条)。

⑦   受領証の発行
 人力資源社会保障行政部門は、人員削減報告を受領した後、報告資料が完備しているものについては、受領証を発行して記録として保存し、報告資料が完備していないものについては、期限を定めて補正するよう伝えなければならない(第12条)。

⑧   人員削減の実施
 企業は、人力資源社会保障行政部門から受領証を受領してから10日後以降に、人員削減を実施し、削減対象人員との労働契約を解除し、経済補償金を支払うことができる。賃金や社会保険料の未払いがある場合は、労働契約の解除の手続を行う際に、これらを清算しなければならない(第13条)。

⑨   人員削減後の義務
 企業は、労働契約を解除する際に労働契約解除証明を労働者に発行し、15日以内に個人ファイル及び社会保険関係の移転手続を行わなければならない(第16条)。

⑩   労働契約合意解除の場合の報告義務
 人員削減を要する事由が生じ、合意して労働契約を解除した労働者の人数が20人以上となる場合は、30日前までに労働組合又は従業員全体に状況を知らせ、かつ、労働契約を解除する人数を当地の人力資源社会保障行政部門に報告しなければならない(第18条)。

2 日本企業に対する意義

 人員削減をする場合の大まかな手続(労働組合等への説明、人員削減提案の作成、当局への報告等)は、新規定と旧規定とで大きな変更はないものの、新規定では人員削減提案に盛り込むべき事項などが明確に規定されるとともに、旧規定のもとでは、単に当局から人員削減について意見を聴取しなければならないとされていたのが、新規定では、当局からの人員削減報告提出の受領証を取得してから10日後以降に人員削減を実施できると具体的な手続が定められている点などが異なっている。中国における事業再編や撤退を検討する際には、人員削減が関わってくることが多いことから、新規定には注意する必要があると考えられる。

以上

 

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