タイ:保険会社に関する外資規制の緩和
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 佐々木 将 平
タイの生命保険及び損害保険会社に関する外資規制を緩和する内容の財務省規則が、昨年12月6日に公布され、本年1月18日付で施行された。
タイでは、ここ数年、生命保険及び損害保険事業に関する外資規制の緩和が段階的に進められている。外資による株式保有は総株主の議決権の25%以下、外国人取締役の数は全取締役の4分の1以下までに原則として制限されているが、保険委員会事務局(Office of Insurance Commission、OIC)の許可を得ることにより、それぞれ49%及び2分の1までの引上げが認められる。また、OICの推奨に基づき財務大臣が許可した場合には、外資による49%超(最大100%)の株式保有や外国人取締役が全取締役の過半数を占めることも認められている。
財務大臣の許可(外国人株主が保険会社の株式の49%超を保有すること及び保険会社の取締役の過半数が外国人となることの許可)が与えられるためには、以下のいずれかに該当する必要がある。
- ① 保険会社の経営・運営状況が被保険者や公衆に損害を及ぼす状況にあること
- ②(外資出資比率や外国人取締役比率の引上げが)保険会社又は保険業界の安定性又は健全性の促進のためであること
今回の財務省規則では、上記の②について以下の具体的要件が定められた。損保事業については既に①の具体的要件が定められているが、生保事業について外国人株主が49%超の株式を取得するための具体的要件が明示されたのは初めてであり、その意義は大きい。
- 保険会社における要件
- • 自己資本比率が、OICの定める基準を下回らないこと。
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• 保険会社や保険業界全体の健全化を促進するための事業運営計画を有していること(3年間の事業計画の提出が求められる)。
- 外国株主にかかる要件
- • 保険業を支援し若しくは保険業に関連する事業において10年以上の経験を有していること。
- • 財務上及び運営上の安定性を有すること。外国株主又はその親会社について、定評のある格付会社による格付けがA以上であること。
- • 当該保険会社の経営システムの発展及び事業の将来性及び競争力の強化のための、明確な事業運営及び技術移転の計画を有していること。
- • 保険会社の事業運営計画を安定的に実行するために、当該保険会社を財務的に支援する能力があること。
かかる申請があった場合、OICは必要書類の提出完了時点から90日以内に財務大臣に対して許否に関する意見を述べ、かかるOICの意見に基づき、財務大臣が90日以内に許否を判断することとされている。
ここ数年の外資規制の緩和に伴い、外資によるタイの生保・損保の買収や出資比率引上げが相次いでいるが、今回の緩和措置によりその動きがさらに加速することが期待される。