インド新予算案と予算審議議会
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 山 本 匡
1.2015-16年度(2015年4月~2016年3月)予算案の発表
2015年2月23日にインドの予算審議議会(Budget Session)が開会し、28日に、2015-16年度(2015年4月~2016年3月)の予算案(Union Budget 2015-16)が発表された。同予算案は、モディ政権初の通年の年度予算案であるため、高い注目が集まっていた。
新予算案の最大の目玉は、法人税の基本税率の引下げであろう。4年をかけて、30%から25%へと引き下げる。モディ政権は、インドの製造業発展を目指して「Make in India」を標榜しており、この基本税率の引下げは、外資誘致、国際競争力の強化を目指すものであろう。
その他、物流が劇的に変化するといわれている全国一律の物品・サービス税(Goods and Services Tax(GST))の導入時期(2016年4月)の明示等の様々な財政・税制政策が含まれている。また、裁判所に商事専門部を設置することが提案されている。紛争解決の迅速化を図ろうとするもので、事態の急激な改善・訴訟の迅速化が期待できるわけではないが、評価すべき内容である。
2.予算審議議会
予算審議議会では、予算案以外の法案も審議される。
重要法案の1つとして、2015年土地収用並びに生活再建及び再定住における公正な補償と手続きの透明性に関する改正法案(Right to Fair Compensation and Transparency in Land Acquisition, Rehabilitation and Resettlement (Amendment) Bill, 2015)(新土地収用法改正法案)がある。これは、2014年に施行された、2013年土地収用並びに生活再建及び再定住における公正な補償と手続きの透明性に関する法律(Right to Fair Compensation And Transparency in Land Acquisition, Rehabilitation and Resettlement Act, 2013)(いわゆる、新土地収用法)の改正法案である。同改正法案は、あまりに厳格な土地収用要件・手続き等を緩和しようとするものであり、下院(Lok Sabha)では承認された。しかしながら、インド議会は、いわゆるねじれ議会で、与党が、上院(Rajya Sabha)の議席の過半数を有しない。そして、野党は同改正法案に強く反発している。上院で承認されるのか、現況ではハードルがまだ高いように思われるが、今後の動きを注目したい。
外国投資家から注目を集めていた重要法案として、1938年保険法(Insurance Act, 1938)等を改正する、2015年保険法改正法案(Insurance Laws (Amendment) Bill,2015)がある。インドの保険会社への投資上限を、26%から49%に引き上げること等を定めるものである。
新土地収用法改正法案とは異なり、保険法改正法案は上下両院で承認され、保険法改正は、2008年保険法改正法案(Insurance Laws (Amendment) Bill, 2008)以来、7年越しでようやく決着を見た。改正保険法及び関連規則によれば、インド側が保険会社の「支配権(control)」を保有し続けなければならないこととなり、その支配権の内容が問題となり得るが、投資促進という観点において好ましい改正である。
インド議会は、現在休会中で、4月20日に再開予定である。新土地収用法改正法案のみならず、2014年会社法改正法案(Companies (Amendment) Bill, 2014)等もペンディングとなっており、再開後の議会に注目したい。