◇SH3705◇インドネシア:オムニバス法の制定(12)~外国投資要件の変更 中村洸介(2021/08/03)

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インドネシア:オムニバス法の制定(12)
~外国投資要件の変更

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 中 村 洸 介

 

(承前)

 2020年11月2日に制定された雇用創出に関する法律(通称「オムニバス法」)に関連して、インドネシア投資調整庁(BKPM。現在は投資省に改組されている。)が新たな規則(以下「BKPM新規則」という。)を制定し、本年6月2日から施行された。BKPM新規則は、オムニバス法の施行規則の一つである「リスクベース事業許可実施に関する政令2021年第5号」の細則として制定された。同政令及びBKPM新規則において、BKPMの旧規則が定めていた外国投資要件が変更されている。

 

⑴ 最低投資金額

 外国資本企業には、インドネシア標準産業分類(KBLI。5桁の数字で構成される。)に基づく事業分野ごとかつ事業地ごとに、最低投資金額として100億ルピア超(土地及び建物を除く)が原則として求められる。

 この原則の例外として一定の業種に定められている個別のルールについて、以下のとおり変更された。例えば、a. 大規模商業に関しては、外国資本企業が、衣服の卸売業(KBLI:46412)及び化粧品の卸売業(KBLI:46443)に従事しようとする場合、KBLIコードの最初2桁は同じ「46」であるため、変更前は、投資金額は100億ルピア超で足りたが、最初4桁で見ると「4641」と「4644」と異なるため、変更後においては、200億ルピア超の投資金額が必要となる。また、d. 製造業に関しては、例えば車両の車体の製造(KBLI:29200)とスペアパーツの製造(KBLI:29300)を1つの生産ラインで行う場合、投資金額は100億ルピア超で足りることになった。

 

変更前

変更後

a. 大規模商業(卸売業含む)

KBLIの最初2桁ごとに、100億ルピア超(土地建物を除く)

KBLIの最初4桁ごとに、100億ルピア超(土地建物を除く)

b. 飲食業

1つの県/市ごとに、100億ルピア超(土地建物を除く)

KBLIの最初2桁ごとかつ1箇所ごとに、100億ルピア超(土地建物を除く)

c. 建設業

1つの「建設活動」ごとに、100億ルピア超(土地建物を除く)

KBLIの最初4桁ごとに、1つの「建設活動」において100億ルピア超(土地建物を除く)

d. 製造業

原則のとおり

異なるKBLIの製品であっても1つの生産ラインで製造する場合、100億ルピア超(土地建物を除く)で足りる

e. 不動産事業

原則のとおり

建物全体又は集合住宅への投資を行う開発事業は100億ルピア超(土地建物を含む

(100億ルピア:約7,580万円)

 上記の最低投資金額の要件は、既存の外国資本企業が新たに別のKBLIに該当する事業を行う場合にも適用されるため、新規投資だけでなく拡張投資のケースも留意する必要がある。

 

⑵ 最低払込資本

 外国資本企業の払込資本(資本金)はこれまで最低25億ルピアと定められていたが、BKPM新規則により、最低100億ルピアまで引き上げられた。

 上記 ⑴ の最低投資金額は自己資本となる投資と融資(貸付)の双方を含む金額であるため、従前は自己資本となる投資25億ルピアと貸付75億ルピア超を組み合わせることによって上記 ⑴ の最低投資金額100億ルピア超の要件を満たすことが可能であった。これに対して今後は、事業開始の時点で自己資本となる投資100億ルピアが必要になることから、外資にとって重要な変更であり、インドネシアへの新規投資を検討するにあたって注意を要する。

 


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(なかむら・こうすけ)

2011年早稲田大学大学院法務研究科修了。2012年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2019年Columbia Law School卒業(LL.M.)。2019年~長島・大野・常松法律事務所ジャカルタ・デスク勤務。

2012年に長島・大野・常松法律事務所に入所し、M&A案件を中心に国内外の企業法務全般に従事。現在は、日本企業によるインドネシアへの事業進出や資本投資、その他現地での企業活動全般についてアドバイスを行っている。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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