中国:商品宣伝のショートメッセージの送信に対する新たな規制の公布・施行
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 德地屋 圭 治
中国で事業を展開する日系企業がその商品に関して広告宣伝活動を行う際に、遵守する必要がある法律として、広告法(1994年10月27日制定)があるが、2015年4月に広告法の規定が改正され、同年9月1日施行予定である(その概要については、若江悠「広告法の改正について」(商事法務タイムライン6月15日号)参照)。この広告法改正とともに、同年5月には、通信ショートメッセージサービス管理規定(以下「SMS規定」という)が制定され、広告宣伝活動に関連したショートメッセージの使用に関する規制が設けられ、同年6月30日から施行されている。もともと、2012年12月28日の全国人民代表大会常務委員会の「インターネット情報の保護の強化に関する決定」において、商業性の電子メッセージの送付に関する規制を行うことが示されていたが、かかる広告法の改正及びSMS規定の制定は、かかる決定を具体化するものである。
中国では、商品に関する広告宣伝活動の一環として、事業者が消費者等の携帯電話へショートメッセージの送信をすることは少なくなく、今回の規制については日系企業も留意が必要である。
1 広告法
まず、広告法によれば、いかなる組織又は個人も、相手方の同意又は要求を得ずに、デジタルメッセージ方式で相手方に「広告」を送信してはならないとされ、また、デジタルメッセージ方式で広告を送信する場合、送信者の身元及び連絡先を明記し、受信者に受信拒否の方法を提示しなければならないとされている。
かかる「広告」の意義について、同法によれば、中国国内において商品販売者又は役務提供者が一定の媒体及び形式を通じて販売を促進する商品又は役務を直接又は間接に紹介する商業広告活動について広告法を適用するとされており、「広告」とは、このような商業広告をいうと考えられるが、送信対象がこのような「広告」に該当する場合には、上記規制を遵守する必要がある。
2 通信ショートメッセージサービス管理規定(SMS規定)
次に、SMS規定は、上記広告法の規定よりもより具体的な規定をおいている。すなわち、ショートメッセージサービス提供者及びショートメッセージ内容提供者は、ユーザーの同意又は要求を得ずに、「商業用ショートメッセージ」を当該ユーザーに送信してはならないとされている。
「ショートメッセージ内容提供者」とは、ショートメッセージサービス提供者(例えば、電信情報サービス業者など)を通じてショートメッセージを送信する組織及び個人をいい、「商業用ショートメッセージ」とは、商品、役務又は商業投資機会を紹介し、販売促進を行うためのショートメッセージをいうとされている。上記規定により、携帯電話会社等を通じて商品宣伝等のショートメッセージを送信する場合、SMS規定の定めを遵守する必要がある。
この場合、「ショートメッセージ内容提供者」が遵守する必要がある主要な具体的な定めは、以下のとおりである。
- • ショートメッセージ内容提供者は、「商業用ショートメッセージ」の送信について、ユーザーの同意又は要求を得る必要がある。
- • ショートメッセージ内容提供者は、ユーザーに同意を要求する場合、送信する「商業用ショートメッセージ」の類型、頻度及び期間などの情報について説明しなければならない。
- • ショートメッセージ内容提供者は、「商業用ショートメッセージ」をユーザーに送信する場合、便利で有効な受信拒絶方法を提供し、ショートメッセージとともに、当該方法を告知しなければならない。
- • ショートメッセージ内容提供者は、ショートメッセージにおいて、ショートメッセージ内容提供者の名称を明記しなければならない。