◇SH2574◇ベトナム:【Q&A】外国人の強制社会保険加入に伴う労働組合費の納入 井上皓子(2019/05/31)

未分類

ベトナム:【Q&A】外国人の強制社会保険加入に伴う労働組合費の納入

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 井 上 皓 子

 

  1. Q: 外国人の強制社会保険の加入義務化の開始に関係して、労働組合費は社会保険料を基礎として計算されますが、外国人が強制社会保険に加入することによって、納入する労働組合費も増額する必要があるのでしょうか。
     
  2. A: 法令の未整備のため、現時点ではその必要があるように読めてしまいます。しかし、そのような結論の妥当性には疑問があり、早急な法改正が必要と思われます。

 労働組合の資金は、①労働組合に加入した労働者が納付する労働組合費、②企業側が納付する労働組合費、③国家からの補助金、及び④その他の寄付等から構成されます(労働組合法第26条)。なお、組合費は、企業内労働組合の有無にかかわらず上部組合に対して納付する必要があり、このうち、①については、労働者の社会保険料納付用の給与(ただし基礎賃金の10倍を上限とする)の1%の金額が、給与から源泉徴収され、使用者が労働者に代わって納付することになります。ここでは、「労働組合に加入した」労働者と規定されていますが、外国人労働者は労働組合には加入できないとされています(労働組合法第5条第1項、ベトナム労働組合のガイドライン第238/HD-TLĐ号1条2項a号)。したがって、外国人労働者は、社会保険の加入対象となるか否かにかかわらず、組合費の労働者負担分である①については納入する必要はありません。

 他方、②の企業負担分については、具体的な金額は、「社会保険法令に従い社会保険加入対象となる労働者」の総人数×社会保険算定の基礎となる賃金×2%で計算されることになります(労働組合法第26条2項、労働組合資金に関する政令第91/2013/NĐ-CP号第5条)。

 そして、ここでは、「社会保険法令に従い社会保険加入対象となる労働者」が算定根拠とされ、①のように「労働組合に加入した」労働者に限定するという規定がありません。この点について、外国人の強制社会保険加入義務化が施行されて以降、組合員とはなり得ない外国人労働者数を除外するような政令の改正等はなされていません。すなわち、そのまま解釈すれば、今般の外国人労働者の強制社会保険加入義務化により、外国人労働者が新たに強制社会保険に加入した場合には、その分、企業の組合費負担も増額することになってしまいます。

 このような状況は不合理と思われますので、個々の労働組合との協議により交渉の余地はあろうかと思いますし、労働組合によってはあえてこの点を認識せずに請求してこない例もあろうかと思います。しかしながら、法令の文面上は上のとおりであり、労働組合が外国人分を含めて組合費を請求してくれば、それに抵抗するのは困難と思われます。論理的には、全部未納の場合は納付すべき額の18%~20%(ただし最大1.5億ドンが上限)、納付の遅滞又は一部の未納の場合は納付すべき額の12%~15%(上記と同様の上限あり)の罰金が課される可能性があります(政令第88/2015/ND-CP号第1条18項によって改正された政令第95/2013/ND-CP号第24c条)。

 

タイトルとURLをコピーしました