◇SH1395◇ベトナム:医薬品輸入業の外資への解禁~意味のある解禁なのか?(1) 澤山啓伍(2017/09/15)

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ベトナム:医薬品輸入業の外資への解禁~意味のある解禁なのか?(1)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 澤 山 啓 伍

 

 ベトナムではこれまで外資企業による医薬品の輸入販売は実質的に認められていなかった。しかし、2017年1月に施行された新薬事法(法律第105/2016/QH13号)、及び2017年7月1日に施行された政令第54/2017/ND-CP号(以下、「政令54号」という。)により、極めて限定的ながら、外資企業による医薬品輸入業の認可の取得に道が開かれることになった。本稿では、この新薬事法及び政令54号で認められた外資企業の事業内容の範囲について概説する。

 なお、医薬品製造・販売を含むライフサイエンス・ヘルスケア事業(具体的には、病院・クリニック業、介護業、看護・介護人材育成業、医療機器製造・販売業、医薬品製造・販売業、健康食品・サプリ製造・販売業、化粧品製造・販売業)に適用される外資規制及び業法による規制については、2017年2月に当事務所とデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社が共同で行った「ライフサイエンスインダストリー 共催セミナー ベトナムのライフサイエンス・ヘルスケア市場参入に係る最新の動向」において、取り纏めてご説明させていただいた際の資料があるので、入手ご希望の方は筆者紹介に記載された事務所のWebsiteを通じて筆者までご連絡をいただきたい。

 

1. これまでの規制

 ベトナムがWTOに加盟した際の誓約(WTOコミットメント)では、外資企業による商品の販売業について、2009年1月以降市場開放を約束している。但し、例外的にタバコ、書籍、新聞、原油、米などと並んで、医薬品については市場開放の対象となる品目から明示的に除外されている。

 これに基づき、通達第34/2013/TT-BCT号において、外資企業による完成医薬品、医薬品原料、ワクチン、生物学的製剤の小売及び卸売は禁止されていた。この禁止の対象となる外資企業の範囲について明文はないが、1%でも外国企業が資本を有する企業は外資企業に該当するというのが実務上一般的な理解であった。実際、過去に、株式市場に上場して4.7%の持株比率を有する外国人株主がいる企業が、その事業目的に医薬品の小売を加えようしたところ、当局がそれを認めなかったという例が報道されている。

 他方、ベトナム国内で外資企業が医薬品を製造することについては、特に外資規制は定められていない。政令第79/2006/ND-CP号では、外資企業による医薬品の輸入権の取得を認めていたが、実際には、輸入権を取得できるのは、医薬品製造を行う外資企業がその製造のために医薬品原料を輸入する場合に限られていた。なお、明文規定はないものの、国内で自社が製造した医薬品を国内で販売することは可能であると一般的に理解されていた。

(2)に続く

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