インド:2019年消費者保護法上のProduct Liability(2)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 山 本 匡
前回に引き続き、インドの2019年消費者保護法上のProduct Liabilityについて概説する。
3. PL訴訟の原告適格者
Product Liabilityは、最終的には、消費者等が責任主体に対する損害賠償請求訴訟を、2019年消費者保護法(CPA)に基づき設置された準司法機関である地方消費者紛争救済委員会(District Consumer Disputes Redressal Commission)、州消費者紛争救済委員会(State Consumer Disputes Redressal Commission)または国家消費者紛争救済委員会(National Consumer Disputes Redressal Commission)に対して提起することにより追及することになるが(以下、「PL訴訟」という。)、以下の者がPL訴訟を提起することができる。
- ① 消費者(商業目的で物品を購入し、またはサービスを利用した者は含まれないが、自営業で専ら生計を立てるために物品を購入し、またはサービスを利用した者は消費者に含まれる。)
- ② 法律に基づき登録された自主的消費者団体
- ③ 中央政府または州政府
- ④ 中央消費者保護当局(Central Consumer Protection Authority)
- ⑤ 同一の利益を有する多数の消費者が存在する場合、1人以上の消費者
- ⑥ 消費者が死亡した場合、その法定相続人または法定代理人
- ⑦ 消費者が未成年者である場合、その親または法定後見人
したがって、PL訴訟の原告適格を有する者は、製造物またはサービスを購入した消費者本人に限られない。
4. 責任主体
CPA上、製造物製造者(product manufacturer)、製造物販売業者(product seller)および製造物サービス提供者(product service provider)がPL訴訟において責任を負うとされている。それぞれの者の範囲は以下の通りである。各責任主体の内部において重複するものがあると思われるのに加えて、責任主体相互の間でも重複するものがあると思われ、いずれの責任主体に該当することになるのか、責任主体によって損害賠償責任を負う場合が異なるので検討が必要となろう。
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⑴ 製造物製造者
- ① 製造物またはその部品を製作する者
- ② 他者の製作した部品を組み立てる者
- ③ 他者が製作した製造物に自己の標章を付しまたは付させた者
- ④ 製造物を製作し、かつ当該製造物の販売、流通、リース、インストール、準備、パッケージ、ラベル、市場取引、修理、保守その他当該製造物を商業目的におくことに関与する者
- ⑤ 製造物の販売前に当該製造物を設計、創出、加工、建設または再製造する者
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⑥ 製造物の製造物販売業者でありかつ当該製造物の製造者である者
- ⑵ 製造物販売業者
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製造物に関して製造物販売業者とは、事業の過程において、当該製造物の輸入、販売、流通、リース、インストール、準備、パッケージ、ラベル、市場取引、修理、保守その他当該製造物を商業目的におくことに関与する者をいい、以下の者を含む。
- ① 製造物販売業者である製造者
- ② サービス提供者
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ただし、以下の者は製造物販売業者に含まれない。
- ① 建築家屋の販売または住宅もしくはアパートの建築に従事する者以外の不動産の販売者
- ② 取引における専門的サービスの提供者(ただし、当該取引において、製造物の販売または使用が付随的なものにすぎず、見解、技能またはサービスの提供が当該取引の本質であることを要する。)
- ③ 製造物の販売に関して金銭的な立場でのみ行為する者
- ④ 製造者、卸売業者、流通業者、小売業者、直接の販売者または電子サービス提供者以外の者
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⑤ リース契約に基づき、製造物の欠陥を検査および発見する合理的な機会を有することなく製造物をリースする者(ただし、賃貸人以外の者が、製造物の選定、占有、保守および運用を管理することを要する。)
- ⑶ 製造物サービス提供者
- 製造物に関して製造物サービス提供者とは、当該製造物に関して何らかのサービスを提供する者をいう。
(3)につづく