SH4423 金融庁、「全資産担保を活用した融資・事業再生実務に関する研究会」報告書 小野塚格(2023/04/21)

取引法務担保・保証・債権回収

金融庁、「全資産担保を活用した融資・事業再生実務に関する研究会」報告書

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 小野塚   格

 

1 はじめに

 「全資産担保を活用した融資・事業再生実務に関する研究会」(座長:神田秀樹学習院大学大学院法務研究科教授)は、2023年3月31日、報告書[1]および報告書概要(以下、報告書および報告書概要[2]を総称して「本報告書」という。)を発表した。

 

2 本報告書の位置づけ

 現在、法務省の法制審議会担保法制部会にて、担保制度一般の見直しに向けた幅広い議論が進められており、事業全体に対する担保制度もその論点の一つとされている。また、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(2022年6月7日閣議決定)においても、事業全体に対する担保制度が、他の資金調達にかかる施策とともに「関連法案を早期に国会に提出することを目指す」とされた。

 以上を受けて、金融庁は、2022年11月に金融審議会「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」を設置した。同ワーキング・グループは、事業全体に対する担保制度を早期に実現する観点から、現行制度とのバランスや整合性に留意し、かつ、これまでの法制審議会担保法制部会における議論の蓄積等を踏まえつつ、特に、事業性に着目した融資実務を動機付けるような担保制度の設計とその導入に伴い求められる金融実務について、集中的に議論を行い、2023年2月10日に、その議論の内容をまとめた報告書を公表した。

 事業全体に対する担保制度が法制化された際には、新たな担保制度の活用が金融機関と事業者との間のリレーション構築を促し、事業性に着目した融資に繋がるよう、新たな実務慣行の醸成が重要となる。

 そこで、金融庁は、すでに類似の担保制度である全資産担保を活用し、事業キャッシュフローに着目した融資を行う実務が根付く米・英の制度・実務について調査を行い、日本の実務への示唆をまとめることとし、公益社団法人商事法務研究会に調査を委託した。公益社団法人商事法務研究会は、有識者や実務家をメンバーとする「全資産担保を活用した融資・事業再生実務に関する研究会」を組成し、同研究会において、米・英の全資産担保にかかる制度・実務の調査および日本の実務への示唆について議論が行われた。その調査結果および議論の内容をまとめたものが、本報告書である。

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(おのづか・いたる)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。1999年早稲田大学法学部卒業。2004年早稲田大学大学院法学研究科修了。2005年弁護士登録(東京弁護士会)。事業再生・倒産処理案件を柱としつつ、M&A、危機管理、訴訟・紛争解決、労務、会計・税務等を組み合わせた総合的なリーガルサービスを提供している。株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)出向中を中心に「経営者保証に関するガイドライン」を利用した経営者の債務整理案件を多数手がけている。2016年度及び2021年度東京弁護士会倒産法部事務局次長。杏林大学総合政策学部非常勤講師(倒産法及び労働法)。

 

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