SH4505 不正競争防止法等の一部を改正する法律案、参院本会議で可決・成立 ――デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化等―― 井上乾介/横田瑛弓(2023/06/21)

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不正競争防止法等の一部を改正する法律案、参院本会議で可決・成立
――デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化等――

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士・カリフォルニア州弁護士 井 上 乾 介

弁護士 横 田 瑛 弓

 

1 はじめに

  2023年6月7日、「不正競争防止法等[1]の一部を改正する法律案」(以下「本改正案」という。)が参議院本会議で可決され、6月14日に公布された[2][3]。本改正案は、公布日から起算して1年を超えない範囲内の政令で定める日に施行される。

 改正法は、スタートアップならびに中小企業等による知的財産を活用した新規事業展開の後押しなどを念頭に見直しが進められ、①デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランドならびにデザイン等の保護強化、②コロナ禍ならびにデジタル化に対応した知的財産手続等の整備、③国際的な事業展開に関する制度整備の3つを柱とする。

 本稿では、①を取り上げ、改正法の内容を概観する。

 

2 デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化

  ⑴ 登録可能な商標の拡充

 ① コンセント制度の導入[4]

  現行の商標法においては、先願にかかる他人の登録商標と類似する商標であり、かつ、他人の登録商標と類似する商品カテゴリーに属する場合、商標登録は受けることができない[5]。したがって、本規定により、登録の拒絶通知がされた場合、後願商標の出願人としては、手続補正書の提出、意見書の提出、先願商標権者との譲渡交渉またはアサインバック[6]、引用商標に対する不使用取消審判等の対応が必要となっていた。

 しかし、これらの対応は、金銭的ならびに時間的コストがかかることから、より簡便な方法として、先願商標権者の同意(コンセント)に基づき、後願商標の登録を認めるコンセント制度導入の要請があった。また、米国や欧州では、コンセント制度を導入している国が多い中で、日本でコンセント制度が導入されていないことが海外ユーザーの日本での商標出願ならびに登録の障壁となっていた。そこで、ユーザーのニーズの高まり、国際的な制度調和の観点から、改正法においてはコンセント制度を導入し、①先願登録商標権者の同意があり、かつ、②先願登録商標と出所混同のおそれがない場合においては登録可能とした。[7]

 出所混同のおそれがないことに関しては商標法1条の目的である需要者の利益を考慮し、需要者の混乱を防ぐとの観点から設けられた要件である。

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(いのうえ・けんすけ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。

 

(よこた・えみ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2019年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2021年東京大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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