カンボジア:カジノ規制の概要(下)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 今 野 庸 介
6 その他の主たる規制
⑴ カジノ関連機器の製造、輸入及び販売に係るライセンス
ゲーミング機器の製造者、輸入者及び販売者等はライセンスの取得が必要になる。
⑵ ジャンケットに係るライセンス
商業ゲーミングのプロモーター(いわゆる、ジャンケット)は、ライセンスを取得する必要がある。当該プロモーターは、ライセンスを取得した上で、カンボジアにおいて商業ゲーミングの促進活動を行うことができる。例えば、カジノ事業者の代理人として顧客に対してコンプを提供すること、自ら又はカジノ事業者の代理人として外国人の顧客に融資することが許容されている。なお、日本のIR整備法において、ジャンケットに特別な許認可等を与える仕組みは採用されていない。
⑶ 区域規制
ギャンブル法では、商業的ゲーミングに係る区域を禁止区域及び許可区域の2つに区分している。禁止区域とは、文化や宗教を尊重するためにいかなる形態・状況においてもゲーミングの営業が許可されない区域を指す(例えば、シェムリアップにあるアンコールワット)。但し、ギャンブル法施行以前から運営されているカジノ施設は例外的に許容される。他方で、許可区域とは、当該禁止区域以外の区域を指し、複合施設以外にも、空港の自由貿易区域、国際港、クルーズ船なども許可区域に含まれる可能性がある。
⑷ 税務
カジノ事業者は、カジノ事業の総粗収益(いわゆる、GGR)に応じて一定の税金を支払う。具体的には、複合施設外のカジノについては一律GGRの7%、複合施設にあるカジノについては、その税率は顧客層により異なり、一般顧客に関してはそのGGRの7%、VIPプレーヤーに関してはそのGGRの4%の税金を支払うことになる。他のアジアにおけるカジノ市場と比べるとその税率は低く[6]、カンボジアは税制面においてアジアで最も競争力のあるカジノ市場の1つであるといえる。
7 最後に
ギャンブル法におけるカジノ規制の主要な部分は、他の法域におけるカジノ規制と基本的な点において共通するものといえるが、複合施設以外のカジノ施設やスポーツベッティングも許容するなど、比較的多様なギャンブル/カジノを解禁する点に特徴がある。もっとも、カンボジアにおける違法ギャンブルの取り締まりを強化する姿勢をカンボジア政府は見せていることから、その観点からどのようにカンボジアにおいてカジノ規制が運用されるかは注視する必要があろう[7]。また、カンボジアの外資規制はタイやベトナム等に比べると非常に緩やかであり、ゲーミング以外の分野におけるカンボジアへの日本企業による投資との観点からも今後適切なカジノ規制基盤が確立され、それによりカンボジア経済が活性化することが期待される。
以 上
[6] IR整備法においては、カジノ事業者に対し、国庫納付金としてGGRの15%及び認定都道府県等納付金としてGGRの15%(計30%)の納付を義務付けている。
[7] 2020年1月、カンボジア政府は、治安の悪化等を理由にオンラインカジノを禁止している。
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(こんの・ようすけ)
2014年に長島・大野・常松法律事務所に入所。入所以降、ファイナンス案件を中心に国内外の企業法務全般に従事。2020年にミシガン大学ロースクール(LL.M.)修了。2022年8月よりバンコクオフィスに勤務。現在は、在タイ日系企業の一般企業法務等も含め、幅広く企業法務に関与している。
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