ベトナム:証券法の改正(2)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 鷹 野 亨
はじめに
2019年11月26日、現行証券法(以下「現行法」という)を改正する法律54/2019/QH14号(以下「改正法」という)が、国会で可決された。改正法は2021年1月1日に施行される。
改正法では、公開会社の定義や公募条件等の証券取引に関するルールが、明確化・厳格化されている。改正法の主な変更点について、前回に引き続きご説明したい。
証券公募条件の厳格化
改正法では、証券公募条件について現行法より厳格化する変更がなされている。このうち株式の公募条件に関する主な変更は、以下の通りである。
①②については、現行法よりも要件が厳格化され、更に④~⑨の要件が新規に追加された。
上記は1回目の株式公募要件であるが、改正法では、2回目の株式公募について更に要件を加重している。また、社債、転換型社債等の公募条件も同様に厳格化されている(改正法15条2項以下)。
外国人投資家に対する規制
改正法では、ベトナム証券市場に参入する外国人投資家は、法令に基づく外国人持分比率及び投資の条件・手続きに関する規制に従う必要がある。これらに関するルールの詳細は、政府が定めるとしている(改正法51条)。
ルールの詳細は現時点で未定であり、現行法からどのように変更されるのかは不明であるが、外国人投資家には大きな影響があると懸念され、続報が待たれる。
経過措置
上場企業への経過措置として、改正法施行前に株式を証券取引所へ上場していた企業は、原則として、改正法で定められた条件を満たさない場合でも取引所の登録を解除されない旨が定められている(改正法135条4項)。
終わりに
今回の証券法改正では、証券取引所の統合について政府は大筋で統合を進めるという方向に舵を切ったといえるが、各証券取引所の権限配分や政府からの独立性をどのように確保するか等まだ議論するべき点が多数残っており、どのような展開となるか注目される。
また、公募条件の厳格化を含め、外国人投資家にも関係のある重要な改正がいくつかなされたので、その実務への影響を今後検討していく必要がある。