◇SH0134◇インド:インド競争法-自動車メーカー14社に対する巨額の課徴金 田島圭貴(2014/11/14)

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インド:インド競争法 -自動車メーカー14社に対する巨額の課徴金-

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 田島圭貴

 インド競争委員会(日本の公正取引委員会に相当する機関)は、2014年8月25日、日系を含む自動車メーカー14社に対し、競争法違反を理由に、総額約254億5,000万ルピー(約478億円)に及ぶ課徴金の納付を命じた。

 課徴金の納付が命じられたのは、日系ではマルチ・スズキ(約47億1,000万ルピー、約88億5,000万円)、トヨタ(約9億3,000万ルピー、約17億6,000万円)、ホンダ(約7億8,000万ルピー、約14億7,000万円)、日産(約2,000万ルピー、約3,000万円)、また米ゼネラル・モーターズ(約8億5,000万ルピー)、米フォード(約4億ルピー)、独フォルクスワーゲン(約3,000万ルピー)とその傘下のシュコダオート(約4億6,000万ルピー)、独メルセデス・ベンツ(約2億3,000万ルピー)、独BMW(約2億ルピー)及び伊フィアット(約3億ルピー)の各インド現地法人、並びに印タタ自動車(約134億6,000万ルピー)、印マヒンドラ&マヒンドラ(約29億2,000万ルピー)及び印ヒンドゥスタン・モーターズ(約1億4,000万ルピー)の14社であり、インドで事業を展開する大手自動車メーカーの大半を占める。

1.  インド競争法

 インド競争法によれば、いかなる事業者等も、商品の生産、供給、流通、保管、取得若しくは管理又はサービスの提供に関して、インド国内における競争に対して相当の悪影響を及ぼし又は及ぼすおそれのある反競争的協定を締結してはならず、これに反して締結した反競争的協定は無効であるとされている(反競争的協定の禁止)。

 また、いかなる事業者等も、そのインド国内の関連市場における支配的地位を濫用してはならないとされている(支配的地位の濫用の禁止)。

 かかる競争法への違反が疑われる場合、競争法を執行する唯一の機関であるインド競争委員会が調査を行い、違反者に対しては課徴金の納付、違反行為の差止め等が命じられる。

2.  競争委員会が下した命令

 今回、競争委員会が認定した事実によれば、上記自動車メーカー各社は、補修部品供給業者との間の契約において、補修部品の事実上の独占供給を要求することにより、当該自動車メーカー傘下の正規販売店以外に対しては補修部品が供給されないような仕組みを構築し、これにより、正規販売店以外の独立系補修業者は補修サービスを効率的に行うことができないようにすることで、独立系補修業者による自動車補修市場への新規参入や同市場における自由な競争を制限したとされる。

 競争委員会は、かかる上記自動車メーカー各社による行為が競争法(反競争的協定の禁止、支配的地位の濫用の禁止)に違反すると認定し、さらに、自動車は現代生活において不可欠の存在であり今回の競争法違反行為が非常に多くの国内消費者に影響を与えたこと等を指摘したうえで、上記自動車メーカー各社に対し、それぞれ、各社のインドでの直近3事業年度の平均売上高の2%に相当する上記課徴金の納付を命じた。また、かかる課徴金の納付に加え、①補修部品供給業者による補修部品の自由な販売を許容すること、②補修部品の入手が容易になるような効果的なシステムを整備すること等を命じた。

 競争法違反といえば、中国でも、2014年8月20日、日系自動車部品メーカー12社について独占禁止法違反が認定され、このうち10社について、独占禁止法違反の課徴金の額としては過去最高額である総額約12億4,000万元(約233億円)の課徴金の納付が命じられたのが記憶に新しい。インド競争法についても、反競争的協定の禁止及び支配的地位の濫用の禁止に関する規定は2009年に施行されたばかりではあるが、例えば2012年にはカルテルの存在を認定されたセメント製造業者10社に対して総額631億6,590万ルピー(約1,185億円)の課徴金の納付が命じられるなど、競争法違反に対して巨額の課徴金の納付が命じられる事案が既に複数存在する。今後も、競争法違反に対するインド競争委員会の厳しい態度は継続すると思われ、各社、競争法の遵守を徹底することが求められる。

 

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