◇SH3253◇中国:「民法典」の制定と契約編(前編) 川合正倫(2020/07/28)

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中国:「民法典」の制定と契約編(前編)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 川 合 正 倫

 

 コロナウイルス蔓延の影響を受けて延期されて実施された第13期全国人民代表大会において2020年5月28日に民法典が可決され、2021年1月1日より施行される。中国では、これまで民事法律関係の統一的な法律は存在せず、民法典の編纂が期待されているところであった。民法典の施行に伴い、個別法規である民法通則、民法総則、物権法、契約法、担保法、権利侵害責任法、婚姻法、相続法、養子縁組法は廃止される。

 

民法典の構成

第一編 総 則 第1条~第204条
第二編 物 権 第205条~第462条
第三編 契 約 第463条~第988条
第四編 人格権 第989条~第1039条
第五編 婚姻家庭 第1040条~第1118条
第六編 相 続 第1119条~第1163条
第七編 権利侵害責任 第1164条~第1258条
付 則   第1259条~第1260条

 

 民法典は全1260条からなるが、現行の各個別法及びそれらに関する司法解釈の内容を受け継いでいる条文も少なくない。本稿では、企業活動に影響が比較的大きく、民法典の大部分を占める契約編の規定内容について重要事項の一部を現行の各個別法とこれを修正している民法典の条文とともに紹介する。

 

契約編の構成

 契約編は29章562条から構成され、現行契約法の23章428条と比較して充実化が図られている。具体的には、通則において契約の保全に関する規定が新設され、また、典型契約として保証契約、ファクタリング契約、物業サービス契約、組合契約が追加された。さらに、事務管理及び不当利得が新たに準契約として規定されている。もっとも、これらの内容には現行の担保法及び民法通則の規定を部分的に組み込み修正したものが含まれている。

 

契約編で追加された規定

民法典 追加された内容 現行法の規定
第一分編 通則    
第5章 契約の保全 契約法 契約法の司法解釈(一)
契約法の司法解釈(二)
第二分編 典型契約    
第13章 保証契約 担保法
第16章 ファクタリング契約 (新設)
第24章 物業サービス契約 物業サービス紛争の審理に関する司法解釈
第27章 組合契約 民法通則
第三編 準契約    
第28章 事務管理 民法総則
第29章 不当利得 民法総則

 

 

電子商取引への対応

 電子商取引の急増を背景として、電子的手段による契約締結等、電子商取引に対応する内容が規定された。インターネット上で商品やサービスの申込条件を示した場合、相手方がこれを選択し発注が成功したことをもって契約が成立することが規定された。これによりインターネットを通じた取引についても法的安定性が高まるものと思われる。

 

契約法
民法典
第十一条 書面形式とは、契約書、書簡、データ電文(電報、テレックス、ファックス、電子データ交換及び電子メールを含む)等、記載されている内容を有形的に表現できる形式をいう。 第四百六十九条 (略) 書面形式とは、契約書、書簡、電報、テレックス、ファックス等、記載されている内容を有形的に表現できる形式をいう。 電子データ交換、電子メール等により記載されている内容を有形的に表現でき、随時に調査、収集、利用できるデータ電文は、書面形式とみなす。
第二十四条 (略) 申込が電話、ファックス等の高速通信方式により行われる場合、承諾期間は、申込受領者に到達した時から計算する。 第四百八十二条 (略) 申込が電話、ファックス、電子メール等の高速通信方式により行われる場合、承諾期間は、申込受領者に到達した時から計算する。
第三十三条 (略) 第四百九十一条 (略) 当事者の一方がインターネット等の情報ネットワークを通じて発する商品又はサービスの情報が申込の要件に合致する場合、相手方が当該商品又はサービスを選択し発注に成功した時に契約は成立するものとする。但し、当事者が別途合意する場合を除く。
 

 

国による発注契約制度の完備

コロナウイルス蔓延時には、外資系企業を含む現地企業に対して政府当局から医療物資やマスク等の提供に関する指示が出ていたようであるが、民法典では、このように災害救助や感染予防を目的として当局が指示する場合には、関係者が契約を締結する義務が明確にされた。

 

契約法
民法典
第三十八条 国が必要に応じて、命令的任務又は国による発注任務を下達する場合、関係する法人、その他の組織の間で、関連法律、行政法規で規定する権利及び義務に従い、契約を締結しなければならない。 第四百九十四条 国が災害救助、感染予防又はその他の必要に応じて、国による発注任務、命令的任務を下達する場合、関係する民事主体は、関連法律、行政法規で規定する権利及び義務に従い、契約を締結しなければならない。 法律、行政法規の規定に従い申込義務を負う当事者は、速やかに合理的な申込を行わなければならない。 法律、行政法規の規定に従い承諾義務を負う当事者は、相手方による契約締結の合理的要求を拒絶してはならない。
 

 

(後編)に続く

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