◇SH0355◇シンガポール:非公開会社を対象とするM&A・グループ内リストラクチャリングの手法 長谷川良和(2015/06/29)

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シンガポール:非公開会社を対象とするM&A・グループ内リストラクチャリングの手法

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 長谷川 良 和

 シンガポールの事業を買収する場合はもちろん、それ以外にも他のASEANやインド所在の事業を買収する際に事業会社の持株会社であるシンガポールの非公開会社を買収する例は少なくない。また、シンガポールの非公開会社を対象としてグループ内リストラクチャリングを行うことも間々ある。

 一般に、シンガポールの非公開会社を対象とするM&Aは、シンガポール会社法の適用を受けるほか、シンガポールの商品又は役務の市場における競争を実質的に制限する可能性があるM&Aについては、競争法についても留意が必要となる。さらに、銀行、金融、保険、報道等の国益上不可欠な業種については、個別の法令により、株式保有が制限され、又は規制当局の許認可が必要とされている。

 シンガポールの非公開会社を対象とするM&A又はグループ内リストラクチャリングで主として用いられる法形態としては、株式譲渡、事業譲渡、合併及びスキーム・オブ・アレンジメントが挙げられる。以下、ごく簡潔に紹介する。なお、シンガポールには、日本のような会社分割、株式交換、株式移転に相当する制度はない。

1. 株式譲渡

 シンガポール会社法上、一般に、株式有限責任会社の株式の譲渡は、譲渡人と譲受人が株式譲渡証書を作成して、株式発行会社に提出し、株主名簿の名義書換を行う方法によって行われる。

2. 事業譲渡

 シンガポールの事業の事業譲渡の場合には、同事業を行うことになる譲受人は、シンガポールの会社又はシンガポールで登記された外国会社の支店でなければならない。事業又はその一部の譲渡とともに当該事業に従事する従業員も譲受人に移動させる場合、当該従業員が雇用法で保護されているか否かにより、取り扱いが異なる。

3. 合併

 シンガポール会社法上、新設合併及び吸収合併が規定されており、これにより合併当事会社は、裁判所の許可なく、包括的に権利義務を承継させることができる。シンガポールでは実務上、会社の買収時に合併の手法が採用されることは稀で、合併は、グループ内組織再編のために主として利用されている。

4. スキーム・オブ・アレンジメント

 スキーム・オブ・アレンジメントとは、シンガポール会社法に基づき、裁判所の許可を得て行われる会社と株主又は債権者との取引をいう。スキーム・オブ・アレンジメントは、対象会社主導の取引であることから、敵対的買収には利用されず、買収者が友好的に対象会社の全株式を取得しようとするときに利用されるのが通常である。

 

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