LIBORの恒久的な公表停止と金融法委員会による
「論点整理」の公表について
アンダーソン・毛利・友常法律事務所
弁護士 戸 塚 貴 晴
1 LIBORの恒久的な公表停止と本邦における対応
LIBORとは、「London Interbank Offered Rate」の略称で、インターコンチネンタル取引所(Intercontinental Exchange)が計算し公表する、ロンドン市場において世界の主要銀行(パネル行)が想定する平均貸出金利である[1]。LIBORは、主要5通貨(⽶ドル・英ポンド・スイスフラン・ユーロ・日本円)につきそれぞれ7つの期間(翌日、1週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月および12ヵ月)に対応するものが公表されているが、2021年末以降、LIBORの公表が恒久的に停止する可能性が高まっている[2]。
LIBORは、金利スワップなどのデリバティブ契約を始め、企業向けの貸出や社債の発行条件などの変動金利の商品において、金利の算出のための指標として使われるケースが多い。LIBORが廃止されると、これらの商品における金利が算出できなくなる。
LIBORは、金融機関のみならず、事業法人や機関投資家など多様な利用者に利用されているため、備えのない状態でLIBORの公表が恒久的に停止された場合、利用者への影響は非常に大きいことが想定される。
各国で対応が進められるなか、日本においては、「日本円金利指標に関する検討委員会」[3](以下「検討委員会」という。)が金融商品や取引の性質に応じて円金利指標を適切に選択し利用していく上で必要な検討の一環として、2019年7月に「日本円金利指標の適切な選択と利用等に関する市中協議」[4](以下「第1回市中協議文書」という。)を公表し、同年11月にその結果を取りまとめた(「『日本円金利指標の適切な選択と利用等に関する市中協議』取りまとめ報告書」[5]。以下「取りまとめ報告書」という。)。また、2020年8月には、「日本円金利指標の適切な選択と利用等に関する市中協議(第2回)」[6](以下「第2回市中協議文書」という。)を公表する等して、貸出および債券に関する対応を主導している。
また、デリバティブ商品については、International Swaps and Derivatives Associationが中心となって対応を進めている。
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(とつか・たかはる)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。1995年東京大学法学部卒業。1995~02年日本銀行勤務。2000年ハーバード大学ロースクール卒業(LL.M.)。2002年ニューヨーク州弁護士登録。2003年当事務所入所、弁護士登録。2006~10年京都大学大学院法学研究科非常勤講師。2010~13年東京大学法科大学院客員准教授。2017年金融法委員会委員就任。銀行法・金融商品取引法を中心とする伝統的な金融規制法や電子マネー・決済サービスに関するアドバイスに加え、幅広い金融取引に多数従事している。
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