SH3509 2021年個人情報保護法改正案 沢崎敦一/中崎 尚(2021/03/02)

取引法務個人情報保護法

2021年個人情報保護法改正案

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 沢 崎 敦 一
弁護士 中 崎   尚

 

1 はじめに

 2021年2月9日、デジタル社会形成基本法案、デジタル庁設置法案とともに、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案(以下、「本整備法案」という。)が閣議決定された。これらの法案は、同日、第204回通常国会に提出され、現在、衆議院で審議中である。

 本整備法案は、デジタル社会形成基本法に基づきデジタル社会の形成に関する施策を実施するため、個人情報の保護に関する法律(以下、「個人情報保護法」という。)、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律その他の関係法律について所要の整備を行うことを目的としている。そのため、提案されている改正の内容は多岐にわたるが、本稿では、個人情報保護法に関する改正案(以下、「2021年個人情報保護法改正案」という。)に焦点を当てて解説する。

 

2 主要な改正点 その1 個人情報保護法への統合 

 現在、個人情報の取扱いに関するルールは、一つの法令ではなく、複数の法令で定められている。すなわち、基本法部分および民間部門における個人情報の取扱いについては個人情報保護法が、行政部門における個人情報の取扱いについては行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(以下、「行政機関個人情報保護法」という。)が、独立行政法人等による個人情報の取扱いについては独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(以下、「独立行政法人等個人情報保護法」という。)がそれぞれルールを定めている。さらに、地方公共団体における個人情報の取扱いについては各地方公共団体が定める条例でそのルールが定められている。

 しかし、近年、情報化の進展や個人情報の有用性の高まりを背景として、官民や地域の枠を超えたデータ利活用が活発化しており、現行法制の縦割りに起因する規制の不均衡や不整合がデータ利活用の支障となるといった問題点が指摘されていた。

 そこで、2021年個人情報保護法改正案では、個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、独立行政法人等個人情報保護法の3本の法律を個人情報保護法1本に統合するとともに、地方公共団体の個人情報保護制度について統合後の個人情報保護法において全国的な共通ルールを規定し、全体の所管を個人情報保護委員会に一元化する等の措置を講ずることが提案されている。

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(さわさき・のぶひと)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。1999年3月東京大学法学部卒業、2001年弁護士登録(54期)。データプライバシー法務、労働法務を中心に、企業法務全般を広く取り扱う。データプライバシー法務に関しては、業界の指針の作成・改正に携わったほか、金融機関、共通ポイントプログラム運営事業者、Eコマース事業者を中心に国内外のクライアントに対し多数の案件についてアドバイスをしている。

(なかざき・たかし)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業スペシャルカウンセル。東京大学法学部卒、2001年弁護士登録(54期)、2008年米国Columbia University School of Law (LL.M.)修了、2009年夏まで米国ワシントンD.C.のArnold & Porter法律事務所に勤務。復帰後は、インターネット・IT・システム関連を中心に、データプライバシー・コンプライアンスのサポート、データビジネス支援引を幅広く取扱う。政府ガイドラインの作成・改正に携わったほか、ヘルスケア、ファイナンス、各種コンシューマービジネスを始め国内外のクライアントに対し多数の案件についてアドバイスを行う。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

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