◇SH3510◇中国:民法典の担保制度の適用に関する最高人民法院の解釈(1) 川合正倫(2021/03/03)

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中国:民法典の担保制度の適用に関する最高人民法院の解釈(1)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 川 合 正 倫

 

 中国では、2021年1月1日の民法典施行に伴い、従来の契約法、物権法及び担保法等の個別法は廃止された。最高人民法院は、司法実務において重要な役割を果たしているこれらの個別法に関する司法解釈についても、民法典との整合性を図るために、改訂作業を行った。

 かかる改訂作業の一環として、担保制度に関して2020年12月31日に「民法典の担保制度の適用に関する最高人民法院の解釈」(以下、「担保制度司法解釈」という。)が公布され、民法典と同日付で施行された[1]

 担保制度司法解釈は、民法典との整合性を図り、民法典の規定をさらに詳細化するほか、全国法院民商事審判工作第九回会議紀要(以下、「第九回会議紀要」という。)、司法実務における判断基準等の内容を反映している。

 本稿では、外商投資企業が注意すべき重要なポイントに絞って担保制度司法解釈を解説する。

 なお、本原稿の執筆にあたっては中国律師の万鈞剣の協力を得ている。

 

1. 担保の一般規定

(1)権限逸脱による担保設定

 実務において会社の法定代表者が権限を逸脱して締結する担保契約や、会社の支店(中国語:分公司)の名義で締結する担保契約の効力が争われる事例は珍しくない。会社法において、会社が対外的に担保を提供する場合の社内決議手続が定められており(会社法第16条)、また、民法典は、会社の法定代表者が権限を逸脱して締結した契約について、相手方が当該権限逸脱を知っている場合又は知り得た場合を除き、有効であるとしている(民法典第504条)。担保制度司法解釈は、民法典及び第九回会議紀要を踏まえて、この点に関しさらに次の判断基準を明らかにしている。

  1. ✓ 法定代表者が担保提供に必要な社内決議手続を経ずに権限を逸脱して担保契約を締結する場合、相手方が善意であれば、会社は当該権限逸脱を理由として担保契約の無効を主張することができないが、これ以外の場合には無効を主張することができる(同解釈第7条1項)。なお、善意とは、相手方が担保契約締結時に当該権限逸脱を知らず、かつ知り得ないことをいうとされ、相手方が会社の決議について合理的な審査を行ったことを証明できる場合には善意となるが、決議が虚偽であることを知っている場合又は知り得た場合は善意に該当しないことが明示されている(同解釈第7条3項)。
  2. ✓ 会社が会社法に定める決議手続に従わずに担保提供した場合であっても、次のいずれかに該当するときには、会社は決議手続の不備を理由として担保の責任を否定することはできない(同解釈第8条。但し、②及び③は上場会社に適用されない。)。

    1. ① 金融機関が信用状を発行する場合又は保証会社が担保を提供する場合
    2. ② 会社が自らの完全子会社の事業経営のために担保を提供する場合
    3. ③ 三分の二以上の担保事項に関する議決権を有する株主が担保契約に署名することによって担保契約に同意した場合
  3. ✓ 株主が1名である有限責任会社が株主のために担保を提供した場合には、会社法に定める担保提供の決議手続の不備を理由として、担保の責任を否定することはできない(同解釈第10条)。
  4. ✓ 会社の支店が株主会又は董事会の決議を取得せずに自らの名義で担保を提供し、相手方は当該会社又は支店に対して担保の責任を請求するにあたって、相手方が当該決議が未了であることについて知らない場合又は知り得ない場合は担保の責任を追及できる(同解釈第11条)。

 上記規定によると、会社から有効な担保提供を受けるためには、善意(知り得た場合は善意にならない。)の証明が重要なポイントとなり、その観点からは担保提供に関する提供者の社内決議手続の完了を確認することが不可欠であると思われる。

 

(2)担保独立の合意の効力

 従来の担保法等でも担保契約の附従性は定められていたが、担保制度司法解釈は、第九回会議紀要を踏まえ、担保契約の効力が主債権契約から独立するという旨の担保独立の合意の効力が認められない旨を明確に定めている(同解釈第2条1項)。

 

(3)住民委員会等又は非営利性の学校等による担保設定

 実務において、土地使用権を取得する際に相手方となることがある村民委員会又は住民委員会が提供する担保、公益を目的とする非営利性の学校、幼稚園、医療機構及び養老機構等が提供する担保が無効であることを再度強調しているほか、次の例外規定を設けている(同解釈第5条、第6条)。

  1. ✓ 村集体経済組織機能を果たす村民委員会が村民委員会組織法の規定する決議手続を経た上で担保を提供する場合
  2. ✓ 上記非営利性の学校等が、(i)教育施設や医療衛生施設等の公益施設等を購入又はファイナンスリースで賃借し、売主又は賃貸人が代金又はリース料の担保ために当該公益施設の所有権を留保する場合、又は、(ii)これらの公益施設以外の不動産、動産又は財産に担保物権を設定する場合

 担保制度司法解釈は、村民委員会等の特別法人や学校等の非営利性法人による担保設定が一律に無効となるわけでないと明確にしているが、上記基準を踏まえた個別判断が不可欠となることから、上記の組織から担保提供を受ける場合には、慎重な検討を行う必要性が高い。

(2)につづく

 


[1] 担保制度司法解釈に関しては、2020年11月9日に意見募集稿が公布されていた。条文数について大きな増減はないものの、施行版では内容面の変更が少なくない。

 


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(かわい・まさのり)

長島・大野・常松法律事務所上海オフィス一般代表。2011年中国上海に赴任し、2012年から2014年9月まで中倫律師事務所上海オフィスに勤務。上海赴任前は、主にM&A、株主総会等のコーポレート業務に従事。上海においては、分野を問わず日系企業に関連する法律業務を広く取り扱っている。クライアントが真に求めているアドバイスを提供することが信条。

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