SH3522 公取委、「デジタル・プラットフォーム事業者の取引慣行等に関する実態調査(デジタル広告分野)について(最終報告)」を公表 臼杵善治(2021/03/09)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

公取委、「デジタル・プラットフォーム事業者の取引慣行等に関する実態調査(デジタル広告分野)について(最終報告)」を公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 臼 杵 善 治

 

1 はじめに

 デジタル・プラットフォーム事業者によるオンラインサービスは、ニュースや天気の確認、家族・友人とのやり取り、オンラインショッピング等、人々の社会生活の中で欠かせないものとなっている。デジタル・プラットフォーム事業者は、検索サービス、SNS、動画サービス、ニュース配信等のオンラインサービスを通じ、様々なデータを集積・利用することにより、消費者の関心に対応した内容の広告を様々な媒体で表示させることが可能であり、デジタル広告において、掲載メディア(媒体社)と広告出稿者(広告主、またその代理店を含む。)の両者を結びつける重要なプラットフォームとなっている。

 公正取引委員会(以下「公取委」という)は、このような状況を踏まえて、デジタル広告分野におけるデジタル・プラットフォーム事業者を取り巻く取引実態や競争の状況を明らかにし、当該分野における独占禁止法違反行為の未然防止や関係者による公正かつ自由な競争環境の確保に向けた取組みを促進するため、デジタル広告の取引実態に関する調査を実施した。

 まず、公取委は、2020年4月28日に事業者向けアンケート結果[1]、消費者向けアンケート結果[2]とともに、「デジタル・プラットフォーム事業者の取引慣行等に関する実態調査(デジタル広告分野)について(中間報告)」を公表し[3]、さらにその後もヒアリング等の追加調査を進め、独占禁止法上および競争政策上の考え方を整理し、「デジタル・プラットフォーム事業者の取引慣行等に関する実態調査(デジタル広告分野)について(最終報告)」(以下「本報告書」という)を2021年2月17日に公表した[4]。以下では、本報告書の概要と独占禁止法上および競争政策上問題となり得るデジタル・プラットフォーム事業者の行為について簡単に紹介することとしたい。

 

2 本報告書の概要

 本報告書では、第1部「はじめに」において、調査趣旨および調査方法等について説明がなされた後、第2部「デジタル広告市場の概要」において、アドテクノロジーの発達により非常に複雑な仕組みとなっているデジタル広告市場について詳細な説明がなされている。特筆すべきは、デジタル広告分野における知識がない読者でもデジタル広告市場の仕組みが分かるように、多数の図を用いながら、またアドテクノロジーの発展の過程を踏まえた説明がなされている点である[5]。さらに、以下の図のとおり、デジタル・プラットフォーム事業者のデジタル広告市場の位置付けが整理されている。

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(うすき・よしはる)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2003年慶應義塾大学法学部卒業。2006年慶應義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(第一東京)。2015年University of London, LL.M. in Competition Law修了。公正取引委員会による審査手続対応、海外当局による調査手続対応、国内外の競争法当局に対する企業結合届出のサポート、競争法コンプライアンスマニュアル作成・競争法コンプライアンストレーニング等の多数の案件を取り扱っている。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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