経済産業省「AI・データサイエンス人材育成に向けたデータ提供に関する実務ガイドブック」活用のポイント
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 中 崎 尚
1 はじめに
経済産業省は2021年3月1日、AI人材の育成を支える企業などの取組みを促進するため、実務上有用と思われる事項をまとめた「AI・データサイエンス人材育成に向けたデータ提供に関する実務ガイドブック」(「本ガイドブック」)を公開した。本稿では、同ガイドブックの内容を紹介するとともに、実務へのインパクトを説明する。
2 ガイドブック作成の背景
これまでAIの社会実装を進めるべく、その基礎となるデータの円滑な取引や利活用の実現を目指し、経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」を始め、数多くのガイドラインや手引きが作成・公表されてきた。しかし現状を見ると、企業の事業上の課題解決にその保有データが十二分に活用される段階には至っておらず、まして他の事業者の課題解決のために、適正な取引条件に基づいてデータが提供されるという状況は夢のまた夢に近い。そもそも、AIの導入やデータの利活用を進められる、AIやデータサイエンス、実務課題に実践的な知見やスキルを有する人材(「AI人材」)は依然としてひどく不足している。
このような惨状を脱却する観点から、現在、下図(本ガイドブック13ページ図3)のような、企業がその事業活動上の課題とそこから生じたデータを他の事業者に提供し、その事業者が提供を受けたデータを用いてAI人材の育成につなげる取組みが着目されている。このような取組みを促進すべく、三者以上の関係者間でのデータの授受を伴うもの(「人材育成事業」)を整理し、教材の基礎となるデータの提供と受領、利用に伴う論点、およびAI人材の育成を支える企業等の取組みを促進するための実務上のポイントを整理したのがこのガイドブックである。
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(なかざき・たかし)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業スペシャルカウンセル。東京大学法学部卒、2001年弁護士登録(54期)、2008年米国Columbia University School of Law (LL.M.)修了、2009年夏まで米国ワシントンD.C.のArnold & Porter法律事務所に勤務。復帰後は、インターネット・IT・システム関連を中心に、データプライバシー・コンプライアンスのサポート、データビジネス支援引を幅広く取扱う。政府ガイドラインの作成・改正に携わったほか、ヘルスケア、ファイナンス、各種コンシューマービジネスを始め国内外のクライアントに対し多数の案件についてアドバイスを行う。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
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