「デジタル時代における著作権制度・関連政策の在り方検討タスクフォース中間とりまとめ」の概要
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 井 上 乾 介
1 はじめに
知的財産戦略本部は、有識者による「デジタル時代における著作権制度・関連政策の在り方検討タスクフォース」を設置し、令和2年9月7日から9回にわたり、デジタル時代の実態に応じた著作権制度や関連政策のあり方について、議論を重ねてきた。
本稿では、令和3年3月11日に公表された「デジタル時代における著作権制度・関連政策の在り方検討タスクフォース 中間とりまとめ」(以下「中間とりまとめ」という。)の概要を紹介する[1]。
2 現状と課題
中間とりまとめでは、はじめに、以下の通り、コンテンツ業界を取り巻く全体的な状況の現状と課題を概観している[2]。
まず、コンテンツを取り巻く環境の変化として、①流通経路の多様化、デジタル化により、メディア媒体とコンテンツが分離して配信ルートが多様化したこと(流通動向の変化)②オンライン視聴・閲覧へのシフト、コンテンツが、従来の娯楽消費財から、SNSを通じたコミュニケーション財に消費用途が拡大したこと(消費動向の変化)、③制作がプロ独占からアマチュア・消費者にまで拡大したこと(創作環境の変化)を挙げている。
また、グローバルなデジタル配信プラットフォームサービスが台頭し、影響力が増大していること、これに対する既存コンテンツ産業の生存戦略として、コンテンツをストレージ化し、制作時期の新旧に関係なく消費・二次利用する状況があることを紹介している。
さらに、中間とりまとめでは、コンテンツのデジタル経済社会上の新たな存在意義として、コンテンツ消費はデータ駆動型経済に必要な顧客嗜好データの収集源としてデジタル経済の主要な中間財になるとの指摘を行っている。
これらの現状認識を踏まえ、中間とりまとめでは、権利処理にかかる時間等の取引コストの高さが利用の制約要因になっていることを課題として指摘している。
この記事はプレミアム向け有料記事です
ログインしてご覧ください
(いのうえ・けんすけ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング