SH3578 公取委と経産省、「スタートアップとの事業連携に関する指針」を公表 矢上浄子(2021/04/14)

競争法(独禁法)・下請法

公取委と経産省、「スタートアップとの事業連携に関する指針」
[1]を公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 矢 上 浄 子

 

1 本指針の公表の経緯

 近年、大企業がスタートアップと連携して新たな価値を創造する、いわゆるオープンイノベーションが重要視されている[2]。他方、スタートアップからは、大企業と共同研究を行う際に、大企業から一方的な契約上の取決めを求められるといった実態も指摘されていた。そこで、まずは経済産業省や特許庁において、スタートアップの実態調査・研究、モデル契約書の作成等の取組みが進められた[3]

 公正取引委員会においても、スタートアップの取引慣行の実態を明らかにするための調査が実施され、2020年11月27日、かかる調査の結果と独占禁止法上の評価等が「スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書」(以下「スタートアップ調査報告書」という。)として公表された[4]

 公取委と経産省は、これらの取組みや調査報告の内容、さらに2020年12月23日に公表された「スタートアップとの事業連携に関する指針(案)」に対して寄せられた各方面からの意見も踏まえ、スタートアップと連携事業者との間であるべき契約の姿・考え方を示すためとして[5]、2021年3月29日に「スタートアップとの事業連携に関する指針」(以下「本指針」という。)の公表に至ったものである。

 

2 本指針の概要

 本指針では、主に①秘密保持契約(NDA)、②技術検証(PoC(Proof of Concept))契約、③共同研究契約および④ライセンス契約という4つの契約段階ごとに、スタートアップ調査報告書でも指摘された各問題事例および独占禁止法上の考え方が示され、さらにオープンイノベーションの促進という基本的な考え方に基づき、各問題事例についての解決方針が示されている。また、契約類型ごとに「モデル契約書」が提案されていることも着目に値する。

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(やがみ・きよこ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2000年中央大学法学部卒業、2001年米国テンプル大学ロースクール(北京校)修了、2002年中国政法大学国際経済法系修士課程修了、2007年早稲田大学大学院法務研究科修了。2002年ニューヨーク州弁護士登録、2008年弁護士(第二東京)登録。2018-2020年神戸大学大学院法学研究科非常勤講師。主に独占禁止法、クロスボーダー取引の分野でアドバイスを行う。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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