◇SH3688◇知的財産推進計画2021が決定・公表される――知的財産戦略本部決定、無形資産投資・活用の促進に向けて (2021/07/19)

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知的財産推進計画2021が決定・公表される

――知的財産戦略本部決定、無形資産投資・活用の促進に向けて――

 

 知的財産戦略本部(本部長・首相)は7月13日、同日開催の会合で「知的財産推進計画2021」を決定し、公表した。

 同本部は知的財産基本法を根拠法とする会議体で、本部長以下、副本部長として内閣府特命担当相(知的財産戦略)・内閣官房長官・文科相・経産相、本部員として他のすべての国務大臣および有識者を構成員とする。主要な所掌事務が「推進計画」の作成、その実施の推進。昨年は5月27日、「新型コロナ後の『ニュー・ノーマル』に向けた知財戦略」を副題として知的財産推進計画2020が公表された。本年は副題を「コロナ後のデジタル・グリーン競争を勝ち抜く無形資産強化戦略」とし、「新型コロナの拡大において明らかとなった我が国の置かれた現状をしっかりと受け止め、今後どのように克服していくべきかについての方向性を示すもの」と位置付けた。戦略本部の下部に設置された構想委員会、構想委員会中に設けられたコンテンツ小委員会、構想委員会下部の価値デザイン経営ワーキンググループ、Create Japan ワーキンググループ、デジタル時代における著作権制度・関連政策の在り方検討タスクフォースにおける議論の成果を取りまとめている。

 当日の会合後の首相発言などを通じ、(a)コンテンツのデジタル配信を円滑にするよう配信の際に発生する複雑な著作権の処理を一元的に行うことができる制度の創設、(b)改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえた企業の知財投資・活用戦略の開示等を促すガイドラインの策定、(c)スマートシティ、ビヨンド5G、グリーンなどの戦略的重要分野における官民による標準化活動に対する支援の強化――が注目されるところであるが、推進計画2021では重点7施策として(A)競争力の源泉たる知財の投資・活用を促す資本・金融市場の機能強化、(B)優位な市場拡大に向けた標準の戦略的な活用の推進、(C)21世紀の最重要知財となったデータの活用促進に向けた環境整備、(D)デジタル時代に適合したコンテンツ戦略、(E)スタートアップ・中小企業/農業分野の知財活用強化、(F)知財活用を支える制度・運用・人材基盤の強化、(G)クールジャパン戦略の再構築を取り込むものとなった。

 上記(A)では(1)知財投資・活用促進メカニズムの構築、(2)価値デザイン経営の普及と実践の促進と整理し、その(1)においては、①本年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂、②(無形資産投資について)経済産業省が公表する価値協創ガイダンスを巡り、特に知財投資・活用戦略の開示・発信のあり方についてガイドラインなどとして示すこと、③ESG要請に対応した知財投資・活用戦略の積極的な発信・対話を取り上げたうえで、企業の知財投資・活用活動が活発化し、これに対して積極的な資金提供が行われることへの期待などを表明。①に絡んでは「重要な点は、開示・発信されるべき内容は、保有している知財の単純なリストなどではなく、その企業が、どのような社会的価値創出を行おうとしているのか、そのためにどのような知財を活用して、どのようなビジネスモデルで価値提供とマネタイズを実現することを目指すのかという戦略的意思の表明である」と指摘するほか、②のガイドラインの方向性について(ア)多様な開示・発信方法が許容されるべき、(イ)知財投資・活用の取組度合いを表すような指標の特定についても検討すべき、(ウ)知財投資・活用戦略を競争力強化につなげるビジネスモデル構築の成功事例を紹介することも有用であると言及した。

 ほか、上記(1)知財投資・活用促進メカニズムの構築に関しては、スタートアップ・ベンチャー企業・中小企業において知財などの無形資産とその活用方策を含む事業全体の価値が適切に評価され、投資家や金融機関がより資金提供しやすい環境の整備が重要であるとし、「のれんや知財等の無形資産を含む事業全体を対象とする新たな担保制度」の創設について、検討の進捗状況を説明するなどしている。

 上記(B)以下に掲げられた具体的施策の筆頭項目、その方向性はそれぞれ次のとおりである。(B):社会課題の解決や国際市場の獲得等のために不可欠な標準の戦略的・国際的な活用を官民で重点的かつ個別具体的に推進する(短期〔2021年度・2022年度〕、中期〔2023年度・2024年度〕)、(C):「包括的データ戦略」に掲げられる重点的に取り組むべき分野(健康・医療・介護、教育、防災、農業、インフラ、スマートシティ)につき、各分野の課題を整理し、2025年までにプラットフォームの実装を目指す。その際、データ提供主体やデータの真正性を担保するための仕組みやデータ取扱いルールの具体化を図る(短期、中期)、(D):デジタル時代における著作権制度の確立に向けた工程表を作成する(短期、中期)、(E):知財取引に関するガイドラインの遵守を大企業や関係団体等に対して求めるとともに、下請Gメン等により遵守状況を確認し、必要な措置を講じる。企業や企業支援者に対し、契約書ひな形の普及・活用を促す(短期、中期)、(F):知財関連制度の新設・改正等を検討する際にはソフトローのメリット・デメリットを踏まえつつ、その活用可能性につき検証したうえで所要の措置を講じる(短期、中期)、(G):甚大な被害を受けているクールジャパン関連分野の存続を確保し、そこで活躍する人々の雇用を確保するため、新型コロナに関する緊急経済対策等を着実に実施するとともに必要な方々に必要な支援措置が適切な時期に講じられるよう経済対策等の内容や手続などにつき分かりやすい発信を工夫する(短期、中期)。

 本計画の末尾には重点事項に係る施策・担当府省ごとに短期・中期の方向性を一覧形式で示す「工程表」が収載されており、適宜参考とされたい。

 

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