◇SH3708◇インドネシア:オムニバス法の制定(13)〜外資規制の再度の改正 福井信雄(2021/08/04)

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インドネシア:オムニバス法の制定(13)
〜外資規制の再度の改正

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 福 井 信 雄

 

 2020年11月に雇用創出に関する法律(通称「オムニバス法」)が施行され、施行から半年が経過し、大統領令や政令レベルの施行規則も概ね出揃い、実質的な改正内容の全貌も明らかになってきた。本稿では、外資規制の緩和に関する最新の法令アップデートを紹介する。

 オムニバス法は、投資の促進による国内雇用の創出を企図した法律であり、同法により約80の法律が一度に改正されたが、なかでも特筆すべきは外資規制の大幅な緩和である。具体的な改正内容については、オムニバス法の施行規則として2021年2月に制定された投資事業分野に関する大統領令(2021年第10号)で定められており、これまで350の業種に対して出資比率の上限規制等の外資規制が設けられていたのが、46の業種(具体的には、新聞・雑誌・放送局等のメディア関連事業、陸上、海上及び航空運送事業、伝統的な民芸品・医薬品・食品等の製造業等)を除き外資規制が完全に撤廃された。その結果、これまで外資規制を理由に参入障壁が高かった卸売業、小売業、フレイト・フォワーディング業、倉庫業などが規制対象から除外され、今後これらの事業分野における外資による投資の活発化が予想される。

 その後2021年5月には、上述の大統領令(2021年第10号)の一部を改正する大統領令(2021年第49号)が制定され、外資規制の変更が追加的に定められた。以下に主要な変更を挙げる。

 

事業分野 改正前
【大統領令(2021年第10号)】
改正後
【大統領令(2021年第49号)】

アルコール飲料製造事業

新規投資の場合、現地の文化と叡智に留意しつつ、特定の州で実施可能

追加投資の場合、州知事の提案に基づき、投資調整庁長官が判断

外資の参入不可(筆者注:大統領令(2021年第10号)制定直後からイスラムの団体を中心に反対の世論が強まり、大統領声明で事実上、外資の参入は不可とされていたのが明文化された。)

郵便事業

49%

削除

クーリエ事業

規制無し

49%(筆者注:クーリエ事業のなかに郵便事業も含まれることから、実質的には規制の範囲が拡大したと解釈される。)

伝統美術館

規制無し

外資の参入不可

軍事防衛産業

防衛大臣の特別承認を要する。

49%までは外資参入可、それ以上は防衛大臣の特別承認を要する。

Eコマース事業

規制無し

食品、飲料、タバコ、化学薬品、医薬品、化粧品、実験用器具、繊維製品、衣料品、履物、家庭用品、台所用品等の通販又はオンラインの小売業については、インドネシアの中小零細業者以外の参入は不可。

 

 大統領令(2021年第10号)が制定されてから4ヶ月足らずで新たな大統領令(2021年第49号)により外資規制の追加的な改正がなされており、まだ引き続き流動的な状況とも言える。今後も実務界からの反発や世論の動向を見ながら更なる改正がなされる可能性も否定できず、引き続き最新の法改正を注視する必要がある。

 


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(ふくい・のぶお)

2001年 東京大学法学部卒業。 2003年 弁護士登録(第一東京弁護士会)。 2009年 Duke University School of Law卒業(LL.M. )。 2009年~2010年 Haynes and Boone LLP(Dallas)勤務。
2010年~2013年10月 Widyawan & Partners(Jakarta)勤務。 2013年11月~長島・大野・常松法律事務所 シンガポール・オフィス勤務。 現在はシンガポールを拠点とし、インドネシアを中心とする東南アジア各国への日本企業の事業進出や現地企業の買収、既進出企業の現地でのオペレーションに伴う法務アドバイスを行っている。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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