SH3729 国際契約法務の要点――FIDICを題材として 第22回 第4章・Variation及びAdjustment(5)――代金額の変更 大本俊彦/関戸 麦/高橋茜莉(2021/08/26)

そのほか

国際契約法務の要点――FIDICを題材として
第22回 第4章・Variation及びAdjustment(5)――代金額の変更

京都大学特命教授 大 本 俊 彦

森・濱田松本法律事務所     
弁護士 関 戸   麦

弁護士 高 橋 茜 莉

 

第22回 第4章・Variation及びAdjustment(5)――代金額の変更

1 はじめに

 今回および次回にかけて、代金額に関するリスク分担ルールおよび変更ルールについて解説する。

 これらのルールについては、第9回において述べた。すなわち、リスク分担ルールは、いずれの契約当事者が、いかなるリスクを負担するかを定めるものである。ただし、リスク分担ルールは、定性的な定めに留まり、例として代金額についていえば、代金額が変動することまでは導けるものの、変動後の具体的な代金額までは、リスク分担ルールによって導くことは困難である。そこで、このような契約締結後に生じる疑義に対処するために、変更ルール等の「手続的」な規定が必要とされ、現にFIDICにおいて定められている。

 代金額に関するルールとして、以下、Variation、法令等の変更、およびコスト変動について検討するが、前提としてまずは、代金額に関するリスク分担ルールの「原則」について要点を確認する。

 

2 代金額に関するリスク分担ルールの「原則」

 第2回で述べたとおり、ルールを見る際に、「原則」のルールと「例外」のルールとを区別する視点は有益である。この視点で代金額に関するリスク分担ルールを見ると、Red Bookと、Yellow BookおよびSilver Bookとの間で、「原則」のルールが異なっている。

 すなわち、第12回で述べたことであるが、Red Bookの基本的な考え方は、Bill of Quantities(BQ)精算であり、概括的に言えば、Contractorは、作業をしただけ支払ってもらえる。したがって、リスク分担ルールとしては、作業量増加のリスクはEmployerが負担するというのが、Red Bookの「原則」である。

 これに対し、Yellow BookおよびSilver Bookの基本的な考え方は、同じく第12回で述べたとおり、lump sumである。これは、日本の請負契約の考え方と同様のものであり、仕事の結果に対して、固定の代金を支払うというものである。したがって、作業量が増加しても代金は増加しないということであり、リスク分担ルールとしては、作業量増加のリスクは、Contractorが負担するという「原則」である。

 

3 Variationに伴う代金の額変更

 第18回2 ⑵ 項で述べたとおり、Variationによる工事等の内容変更は、代金の額変更を伴うものである。これは、建設・インフラ工事契約における「幹」となる権利義務が、受注者(Contractor)の発注者(Employer)に対する建設工事等を行う義務(発注者の側からみれば権利)と、発注者(Employer)の受注者(Contractor)に対する代金支払義務(受注者の側からみれば権利)であることと、それぞれが対応し、対価の関係にあることに照らし、合理的である。すなわち、「幹」となる二つの権利義務のうち、一方が変更されれば、他方の権利義務も変更されるというのは、その対応ないし対価関係に照らし、合理的である。

 このVariationの位置づけは、Red Bookと、Yellow BookおよびSilver Bookとの間で意味合いが異なる。これはリスク分担ルールとの関係であるが、Red Bookでは、前記2のとおり、作業量増加のリスクはEmployerが負担しており、代金額の変更は「原則」のルールの範疇である。これに対し、Yellow BookおよびSilver Bookでは、作業量増加のリスクはContractorが負担しており、Variationによる代金額の変更は「例外」のルールと位置づけられる。

 変更ルールは「手続的」な規定である。Variationによる代金額の変更手続および変更内容の決定方法(Variationのvaluation)については、既に第18回の2 ⑵ 項および前回6項において述べているため、これを参照されたい。

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