◇SH3791◇台湾:再生可能エネルギーの最近の動向(1) 德地屋圭治(2021/10/18)

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台湾:再生可能エネルギーの最近の動向(1)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 德地屋 圭 治

 

 再生可能エネルギーの導入、普及は世界的潮流であり、日本においては2011年東日本大震災を契機に再生可能エネルギーが期待されるようになり普及が進んだが、台湾でも、再生可能エネルギーの導入、普及が進んでおり、台湾の再生可能エネルギーは、日本企業による台湾投資の重要な分野の一つになりつつある。本稿では、台湾の再生可能エネルギーの現状や最近の動向のほか、若干の法的実務上の留意点なども紹介したい。

 

1 台湾のエネルギーに関する政策及び現状

⑴  背景

 (エネルギー政策上の課題)

  台湾は化石燃料など資源に乏しく、エネルギー資源の97.8%(2020年)を輸入に頼っており、国際情勢などの影響を容易に受けるなどエネルギー安定供給が課題である。また、台湾のエネルギー構造における化石燃料の割合が高い点は温室効果ガス削減という世界的な要請に反する問題である。さらに、台湾の原子力発電所は人口密集地に比較的近く、日本の2011年東日本大震災の後、原子力発電のリスクや核処理廃棄物について注目されるようになった。

 (新たなエネルギー政策)

  2016年に現在の蔡英文総統政権に政権が変わった後、2017年に新たなエネルギー政策である「エネルギー発展綱領」及び「グリーンエネルギー科学技術産業刷新推進方案」などが発表された。これらにおいては、2025年までに原子力発電をゼロとし再生可能エネルギーの割合を20%とするなどの目標が掲げられた。

 再生エネルギーに関する政策目標数値は、太陽光発電及び風力発電について以下の通りである。

種類 2025年目標設置容量
太陽光発電 屋根置型 3GW 20GW
地面置型 17GW
風力発電 陸上型 1.2GW 6.7GW
洋上型 5.5GW

(電業法及び再生可能エネルギー発展条例の改正)

 このような政策とともに、2017年に、電業法(電力事業の規制法)が改正され、台湾唯一の電力会社である台湾電力(政府企業)を持株会社に移行させ、発電事業及び送電事業の各会社を保有させることが定められ、送電事業は政府所有企業に限定するものの、発電事業及び電力販売事業は自由化され民間企業の新規参入可能となった(この電業法改正の際に、2025年までに原子力発電をゼロとする旨の規定も電業法に設けられたが、これは2019年に削除された。)。

 さらに、再生可能エネルギー普及の推進のため、再生可能エネルギー発展条例が2019年に改正され、2025年までに再生可能エネルギー設置容量を27GWとすることが定められるとともに、一定容量以上の大口電力消費業者については、再生可能エネルギーで一定量を賄わなければならない義務などが規定された。

 このように台湾においては、新たなエネルギー政策のもと、法令が整備され、再生可能エネルギーの普及が強く進められている[1]

⑵ 台湾のエネルギーの構造

 2020年における台湾の発電の構成の状況及びそのうち再生可能エネルギーにおける各発電の構成は以下の通りである。発電量ベースで再生エネルギーは全体の5.5%であり、そのうち太陽光発電が39.8%を占めている。

 再生可能エネルギーについて、設置容量ベースで見ると、以下の通り、2016年から2020年にかけて、再生可能エネルギーの設置容量は約2倍、うち太陽光発電の占める割合は、26.3%から61.3%に高まっている[2]

 再生エネルギーのうち太陽光発電についていうと、設置容量ベースでの実績及び政策目標は、以下の通りである。2025年までに約3.5倍程度まで拡大される予定ということになる。

種類 2020年設置容量実績 2025年目標設置容量
太陽光発電 5.76GW 20GW

(2)につづく



[1] 本項目の内容については、台湾経済部HP、2020年11月エネルギー転換白書(台湾経済部発行)等による。

[2] 本項目の数値などについては、台湾経済部HP記載の数値を使用している。

 


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(とくじや・けいじ)

長島・大野・常松法律事務所パートナー、上海オフィス一般代表。2003年東京大学法学部卒業。第二東京弁護士会所属。2011年University of California, Berkeley, School of Law卒業(LL.M.)、2013年Peking University Law School卒業(LL.M.)。豊富な海外法務の経験を有する(Zhong Lun、Lee and Liで研修)。

M&Aを中心に国内企業法務分野を取り扱うとともに、海外(中国大陸・台湾を含む)の企業の買収、海外企業との紛争解決、現地日系企業に関するコンプライアンス、危機管理・不祥事対応等企業法務全般に関して日本企業に助言を行っている。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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