◇SH3793◇台湾:再生可能エネルギーの最近の動向(2) 德地屋圭治(2021/10/19)

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台湾:再生可能エネルギーの最近の動向(2)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 德地屋 圭 治

(承前)

2 台湾の再生エネルギーに関する最近の動向

⑴  固定価格買取制度(FIT)

 台湾においては、日本と同様に、電力固定価格買取制度が設けられている。2021年の価格は、2021年1月7日に台湾経済部より公表されている。太陽光発電を例とすると、価格は以下の通りである。

2021年固定価格(太陽光発電)

種別 分類 設備容量 価格上限(上半期価格/下半期価格)
太陽光発電 屋根置型 1kW〜20 kW(不含) 5.67/5.63(台湾元/kW)
20kW〜100 kW(不含) 4.33/4.29(台湾元/kW)
100kW〜500 kW(不含) 4.00/3.92(台湾元/kW)
500kW以上 3.94/3.90(台湾元/kW)
地面置型 1kW以上 3.80/3.72(台湾元/kW)
水面置型 1kW以上 4.20/4.12(台湾元/kW)

注1:小数点3位以下は四捨五入している。

 

 過去の太陽光発電屋根置型(100kW〜500 kW)の買取価格でいうと、2017年4.54/4.54台湾元/kW、2019年4.32/4.24台湾元/kW、2021年4.00/3.92台湾元/kWであるので、緩やかな減額の傾向にある。

 さらに、買取価格については、先住民居住区や離島での設置、農業漁業を継続しながらの設置、高速道路サービスエリア駐車場での設置、学校の球場での設置など一定の条件に合致する場合は、一定範囲で買取価格を加算するとされる。

⑵ 再生可能エネルギー証書の発行及び取引制度(再生可能エネルギー認証中心/T-REC)

 台湾においては、米国のREC(Renewable Energy Certificate)制度や日本のJ-クレジットと同様に、台湾経済部の管轄する再生可能エネルギー認証中心が発行する再生可能エネルギー証書の制度(T-REC)が設けられ、市場での証書の売買取引が認められている。

 すなわち、再生可能エネルギー認証中心は、再生可能エネルギー発電業者の申請により、その発電容量に応じて再生可能エネルギー証書を発行することができ、再生可能エネルギー証書が必要な需要家(例えば、再生可能エネルギー発展条例により一定範囲で再生可能エネルギーの使用が義務付けられる大口電力消費業者など)がこれを購入するというものである。

 台湾の制度(T-REC)は、日本のJ-クレジットと同様、競争入札の方法により証書を販売することができるが、J-クレジットのように競争入札実施前に証書販売の公開名簿に一定期間掲載し買手がつかないことが必要といった制限条件はなく、より広く競争入札の方法での売却機会があるのが特徴的である。

3 台湾再生エネルギー投資に関する若干の法実務上の留意事項

⑴ 外資規制

 台湾では、外国人投資条例により外資による投資が規制されている。同条例によれば、台湾の会社の設立及び台湾の会社の株式を買収するなどの外資投資について、台湾経済部投資審議委員会の許可が必要である。さらに、外資が入った台湾の会社が他の台湾の会社の株式を買収する場合、同様に、同委員会の許可が必要である。申請から許可まで、当局とのやり取りなどを含めて、通常は3、4週間程度以上は必要である。

 台湾の会社の株式の買収などの外資投資が再生エネルギー分野を対象とする場合は、経済部エネルギー局の管轄に及ぶため、上記許可申請時には、投資審議委員会から経済部エネルギー局への意見聴取なども行われ、審査が行われる。そのため、通常よりは、許可まで時間がかかる。

 台湾では、日本など外資による投資は、多くの場合は、通常は許可を得ることができるが、特定の国・地域からの投資は厳しく制限、規制されている。近時は、外資許可申請手続においては、このような特定の国・地域からの出資が投資主体に直接間接に入っていないかなどが当局により厳格に審査される傾向にあるので、この点は留意が必要である。

⑵ 再生エネルギー発電事業に必要な許認可

 再生エネルギー発電事業の許認可については、再生可能エネルギー発展条例及び再生可能エネルギー発電設備設置管理弁法に規定されている。同条例及び弁法で許認可対象となる再生エネルギー発電事業は、基本的には、2000kW未満の設置容量の再生エネルギー発電事業であり、それ以上だと、電業法及びその他関連法規に基づき、異なる許認可の取得が必要となる。

 太陽光発電を例にとると、商業発電までの流れは以下の通りであるが、そのうち、許認可は主として二段階ある。一つは、現地地方当局による同意届出であり、太陽光発電設置に関する事前の審査及び同意であり、もう一つは、現地地方当局による設備登記であり、設備設置後、現地地方当局に登記を行う。規定上、プロセスには一定の時間的な制限があり、同意届出から契約締結までは2ヵ月以内、契約締結から設備登記の申請までは1年以内とされている。

 

 台湾の再生エネルギー投資にあたり注意が必要な法実務上の留意事項については多岐に渡る。上記のほか、会社ストラクチャー、資金調達、土地使用規制などについても注意が必要である。

 

以 上


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(とくじや・けいじ)

長島・大野・常松法律事務所パートナー、上海オフィス一般代表。2003年東京大学法学部卒業。第二東京弁護士会所属。2011年University of California, Berkeley, School of Law卒業(LL.M.)、2013年Peking University Law School卒業(LL.M.)。豊富な海外法務の経験を有する(Zhong Lun、Lee and Liで研修)。

M&Aを中心に国内企業法務分野を取り扱うとともに、海外(中国大陸・台湾を含む)の企業の買収、海外企業との紛争解決、現地日系企業に関するコンプライアンス、危機管理・不祥事対応等企業法務全般に関して日本企業に助言を行っている。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/
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