◇SH3807◇インドネシア:オムニバス法の制定(15)~環境法分野に関する手続の合理化(1) 前川陽一(2021/10/27)

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インドネシア:オムニバス法の制定(15)
~環境法分野に関する手続の合理化(1)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 前 川 陽 一

 

1. はじめに

 2020年11月に制定された雇用創出に関する法律(通称「オムニバス法」)については、これまでの連載においても、投資分野や労務分野に関連する法令改正事項や各種規制緩和措置の概要を解説してきたところである。オムニバス法は、投資の促進により国内雇用を創出することを目的として、幅広い法分野にわたって数多くの法律を一度に改正する試みであり、環境法分野もその一つに含まれている。本稿では、オムニバス法による環境法分野における改正のうち、許認可に関する行政手続の合理化について紹介したい。

 

2. オムニバス法以前の環境許可手続

 インドネシアでは2009年に、環境の保護及び管理に関する法律(以下「環境法」)が制定された。環境法は、環境保護に関する基本原則のほか、事業者の義務や禁止事項、有害・有毒廃棄物の管理、違反行為に対する行政処分及び刑事罰、環境関連紛争の処理などに関する定めを置いている。

 

 環境に重大な影響を及ぼす事業活動に分類される一定の事業を行う者は、環境影響評価(AMDAL)と呼ばれる、当該事業者の事業活動が環境に与える影響に関する専門的調査を行ったうえで、その報告書について環境影響評価委員会による評価を受けなければならないこととされている。これに対して、環境に重大な影響を及ぼす事業活動に分類されていない事業を行う者については、AMDALのプロセスは不要であるが、代わりに、環境管理・モニタリングプログラム(UKL-UPL)を備えることが求められ、その事業活動にかかる環境面の管理・監視対策を文書化して当局の承認を得なければならない。AMDAL又はUKL-UPLが必要な事業者は、これらに基づき環境大臣又は所管の地方自治体の長に対して環境許可(Izin Lingkungan)の取得申請を行わなければならず、環境許可を取得しなければその事業を行うことができないものとされていた。

 

 なお、AMDALプロセスが不要な事業活動を行う零細・小企業については、UKL-UPLよりも簡易な環境管理誓約書(SPPL)を作成すれば足り、環境許可を取得する必要はない。

(2)につづく

 


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(まえかわ・よういち)

1998年東京大学法学部卒業。2006年東京大学法科大学院修了。2007年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2013年Northwestern University School of Law卒業(LL.M.)。2013年~2016年長島・大野・常松法律事務所ジャカルタ・デスク(Soemadipradja & Taher内)勤務。2019年10月~長島・大野・常松法律事務所シンガポール・オフィス勤務。

現在はシンガポールを拠点とし、インドネシア及び周辺国における日本企業による事業進出および資本投資その他の企業活動に関する法務サポートを行っている。

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