経産省、「非財務情報の開示指針研究会」中間報告を公表
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 齋 藤 宏 一
弁護士 川 目 日菜子
1 はじめに
2021年11月12日、経済産業省(以下「経産省」という。)が設置する「非財務情報の開示指針研究会」(座長:北川哲雄青山学院大学名誉教授・東京都立大学特任教授。以下「本研究会」という。)は、「サステナビリティ関連情報開示と企業価値創造の好循環に向けて-『非財務情報の開示指針研究会』中間報告-」(以下「本報告書」という。)を公表した[1]。本報告書は、2021年6月以降の5回にわたり開催されてきた本研究会における議論の結果を取りまとめたものである。
本研究会においては、昨今の企業情報開示において非財務情報の重要性が高まっていること、非財務情報の開示指針をめぐり世界的に動向変化の最中にあることを背景に、非財務情報およびその開示指針に関する世界的な動向について情報の共有を行いながら、質の高い非財務情報の開示を実現する指針のあるべき方向性の検討が進められている[2]。以下、本報告書の概要を説明する。
2 本報告書の概要
⑴ 質の高いサステナビリティ関連情報開示実現のための4つの提言
本報告書の冒頭においては、「質の高いサステナビリティ関連情報開示実現のための4つの提言」(以下「本提言」という。)がなされている。本提言は、持続的な企業価値創造を伝達するために情報の作成者である企業および利用者である投資家、従業員、取引先、消費者等のステークホルダーが意識する必要があるポイントを取りまとめたものであり、その概要は以下のとおりである。
なお、本報告書において、「サステナビリティ関連情報開示」とは、サステナビリティ項目(ESG(環境・社会・ガバナンス)や戦略、リスクマネジメント等)のうち、企業価値に関連する情報の開示を捉えたものであり、「企業価値」とは、企業が将来にわたって生み出すキャッシュ・フローの見通しやその実現能力を、企業が環境・社会・経済に与える外部性に対する資本市場参加者等のステークホルダーからの評価も加味した価値を捉えたものであると定義されている。
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(さいとう・こういち)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。1999年東京大学法学部卒業。2001年弁護士登録(第一東京)。2008年ハーバード・ロースクール(LLM)修了、2008-2009年ハーバード・ロースクール客員研究員。2009年ニューヨーク州弁護士登録。コーポレートガバナンス、株主総会やインセンティブ(株式)報酬制度(特にグローバルベースのもの)の設計・導入・運用に関連する数多くの企業からの相談に対応している。
(かわめ・ひなこ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2019年東京大学法学部卒業。2020年弁護士登録(第二東京弁護士会)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
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