経産省、「グリーン社会の実現に向けた競争政策研究会」
第3回会合を開催
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 矢 上 浄 子
1 本研究会の設置の目的
近年、欧州を中心に、サステナビリティに配慮した企業の取組みを競争政策上どのように考慮すべきかにつき活発な議論が行われている。特に、カーボンニュートラルやグリーン成長に向けた取組みのために連携する事業者に対し、競争法をどのように適用するかという新たな課題が各国の競争当局や企業の間で着目されている。日本においても、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取組みを進める上で、それを後押しするための競争政策のあり方が重要な論点となりつつある[1]。
このような動きを受け、経済産業省は本年3月17日、グリーン社会の実現に向けた取組みを後押しする競争政策上の論点について広く知見を集めて整理を行うため、「グリーン社会の実現に向けた競争政策研究会」(座長・大橋弘東京大学公共政策大学院院長)を新たに設置した[2]。経済産業省競争環境整備室を事務局とする本研究会の委員は、学識経験者4名、シンクタンク研究員1名、法律実務家2名という構成からなり、会合ごとに必要に応じて同分野の専門家を招聘してヒアリングを行い、会合の資料・議事録も原則公開することとされた。
2 これまでの本研究会の経緯
3月25日に開かれた本研究会の第1回会合[3]では、まず欧州の動きとして、現在、欧州委員会が欧州グリーンディール実現に向けた競争政策の見直しを行っているほか、オランダ競争当局(消費者・市場庁)が環境保護等を目的とする事業者間の協定に対する競争法の適用に関するガイドライン案を策定していること等が紹介された(下表)。
また、カーボンニュートラルな社会の実現のためには複数の企業が連携して脱炭素化に取り組むことも想定され、このような取組み(共同行為、企業結合)が競争法の規制対象となり得るところ、①炭素中立に向けたイノベーションを不当に抑制しようとする企業間の合意についてはこれまでどおり厳正に対処し、是正を図る必要がある一方で、②脱炭素化に大きく資する生産設備の集約やサプライチェーンの脱炭素化に向けた企業間の大規模な合意など、複数の企業が共同で行う自律的な取組みであって、炭素中立の産業構造への転換に資するものについては、強く後押しすべきという方向性が示された。
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(やがみ・きよこ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2002年ニューヨーク州弁護士登録、2008年弁護士(第二東京)登録。主に独占禁止法・競争法、クロスボーダーM&A・ジョイントベンチャー、国際紛争等の分野でアドバイスを行う。神戸大学大学院法学研究科及び早稲田大学大学院法務研究科で非常勤講師を務める。プロボノ活動にも積極的に取り組む。
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