インドネシア:個人情報保護法の制定(2)
―個人データの定義、適用対象―
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 前 川 陽 一
3 個人データの取扱い
本法による規制の対象となる個人データの「取扱い」は、取得、収集、処理、分析、保管、訂正、更新、提示、公表、移転、頒布、開示、消去、破棄を含む広範な概念である。データ管理者が個人データを取り扱う場合、以下の根拠に基づくことが求められる。
- ⑴ 本人からの明確で有効な同意
- ⑵ 本人が当事者である契約上の義務の履行、又は契約締結時の本人の要求
- ⑶ 法令に基づく義務の履行
- ⑷ 本人の生命に関わる利益の保護
- ⑸ 公共の利益の枠内の行為、又はデータ管理者の権限内の行為
- ⑹ その他正当な利益に資する行為
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この点は、一般個人データと特別個人データとで扱いを異にしていない。したがって、例えば、個人データを取得する際には、その内容にかかわらず、上記(2)ないし(6)に該当する場合を除いて、本人から事前に同意を得る必要がある。この点において同意の取得が要配慮個人情報についてのみ求められている日本法の規制と大きく異なる。
同意の取得にあたって、データ管理者は、取扱いの正当性、目的、態様及び期間、個人データの種類及び保管期間、本人が有する権利を本人に通知しなければならない。同意は、書面等により記録されなければならず、同意の要請には、明確かつ平易なインドネシア語を用いなければならない。子どもや障がい者の個人データの取扱いについては、保護者等からの同意を要する。
公共の場所に設置する監視カメラ等の映像データ機器については、特別な規定が置かれている。すなわち、かかる機器は、①防犯、防災、交通規制の目的で、②設置されている場所を表示し、③個人を特定しない方法で利用しなければならない。但し、防犯目的の設置においては②及び③の制約は適用がない。
4 本人の権利
個人データの主体である本人は、本法に基づき以下の権利を有する。
- ⑴ 個人データの提供を求める者に対して、その身元、法的根拠、使用目的について説明を求める権利
- ⑵ 個人データの補完、更新及び修正を求める権利
- ⑶ 個人データへのアクセス及び複製を求める権利
- ⑷ 個人データの取扱いの終了、消去及び破棄を求める権利
- ⑸ 個人データの取扱いにかかる同意を撤回する権利
- ⑹ プロファイリング等、個人データの自動処理に基づく決定に異議を申し立てる権利
- ⑺ 個人データの取扱いの延期及び制限を求める権利
- ⑻ 個人データの取扱い規制違反に起因する損害の賠償を求める権利
- ⑼ 個人データの提供及び移転を求める権利
上記のうち⑹、⑻及び⑼の諸権利に関しては、追って施行規則により詳細が規定されるものとされている。
以 上
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(まえかわ・よういち)
1998年東京大学法学部卒業。2006年東京大学法科大学院修了。2007年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2013年Northwestern University School of Law卒業(LL.M.)。2013年~2016年長島・大野・常松法律事務所ジャカルタ・デスク(Soemadipradja & Taher内)勤務。2019年10月~長島・大野・常松法律事務所シンガポール・オフィス勤務。
現在はシンガポールを拠点とし、インドネシア及び周辺国における日本企業による事業進出および資本投資その他の企業活動に関する法務サポートを行っている。
長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/
長島・大野・常松法律事務所は、約500名の弁護士が所属する日本有数の総合法律事務所です。企業法務におけるあらゆる分野のリーガルサービスをワンストップで提供し、国内案件及び国際案件の双方に豊富な経験と実績を有しています。
当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ及び上海にオフィスを構えるほか、ジャカルタに現地デスクを設け、北京にも弁護士を派遣しています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」及び「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携及び協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。
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