SH4231 シンガポール:シンガポールにおける仲裁判断取消訴訟をめぐる動向(1) 梶原啓(2022/12/12)

取引法務企業紛争・民事手続

シンガポール:シンガポールにおける仲裁判断取消訴訟をめぐる動向(1)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 梶 原   啓

 

1 はじめに

 勝訴的な仲裁判断を得ることは仲裁手続に一区切りをもたらす。もっとも、敗訴した当事者は仲裁地裁判所において仲裁判断の取消を試みることも多い。シンガポールの裁判所は仲裁判断の取消を容易には認めないものの、取消のリスクはゼロではない。シンガポール国際仲裁法第24条(b)は、当事者の権利を侵害するような自然的正義(natural justice)の違反がある場合の仲裁判断の取消を認めている。同条項が問題となる典型は当事者が主張反論の機会を十分に与えられない場合のように仲裁手続の公正さを欠く事態が生じた場合である。自然的正義に関する近時の国際商事裁判所(シンガポール高等裁判所の一部門)の判決二つ、シンガポール高等裁判所一般部(General Division)の判決一つ、シンガポール最上級審たる上訴裁判所(Court of Appeal)の判決一つを、それぞれ要点に絞って紹介する。

 

2 自然的正義の違反なしとされた例

  • Sanum Investments Ltd and another v Government of the Lao People’s Democratic Republic and others and another matter [2022] SGHC(I) 9[1] - 2022年6月1日付け国際商事裁判所判決

この記事はプレミアム向けの有料記事です
ログインしてご覧ください

(かじわら・けい)

国際商事仲裁及び投資協定仲裁をはじめとする国際紛争解決を扱う。日本国内訴訟にも深く関与してきた経験をいかし、アジアその他の地域に展開する日系企業と協働して費用対効果に優れた複雑商事紛争処理に尽力する。2013年弁護士登録(第一東京弁護士会)、長島・大野・常松法律事務所入所。2019年ニューヨーク大学ロースクール修了(LL.M. in International Business Regulation, Litigation and Arbitration; Hauser Global Scholar)。Jenner & Block LLPでの勤務を経て、2021年1月から長島・大野・常松法律事務所シンガポール・オフィスにおいて勤務開始。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

長島・大野・常松法律事務所は、約500名の弁護士が所属する日本有数の総合法律事務所です。企業法務におけるあらゆる分野のリーガルサービスをワンストップで提供し、国内案件及び国際案件の双方に豊富な経験と実績を有しています。

当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ及び上海にオフィスを構えるほか、ジャカルタに現地デスクを設け、北京にも弁護士を派遣しています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」及び「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携及び協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。

詳しくは、こちらをご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました