☆タイ:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報) 佐々木将平(2020/03/19)

2020年3月18日号
タイ:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報)

                                                                                長島・大野・常松法律事務所

弁護士 佐々木  将平

はじめに

 欧米における急速な渡航制限・行動制限の拡大に伴い、新型コロナウイルスの国内外における事業活動への影響が一層深刻化してきています。感染拡大に伴う国内の各種法律問題に加え、海外に子会社・関係会社を抱える企業からの問い合わせも増えているため、当事務所の海外オフィスと連携して速報ベースで各国の方針や影響拡大状況の概要につきお知らせ致します。なお、本ニュースレターは感染拡大が続く間、不定期に配信していきたいと思いますが、同感染症の拡大状況については日々状況が変化している中、本ニュースレターの内容がその後変更・更新されている可能性については十分ご留意の上参照ください。本ニュースレターの内容は、特段記載のない限り、2020年3月17日夜時点で判明している情報に基づいています。

 

全体概況  死亡者:1人、感染者数:177人(3月17日現在)

 タイはこれまで比較的感染者数の伸びが抑えられていたが、この数日間連日数十名単位の感染者が公表されている。海外への渡航者及びその濃厚接触者のみならず、タイ国内のボクシングスタジアム、娯楽施設等での感染例も相次いで報告されており、感染が急速に広がりつつある。これを受けて、大学、インターナショナルスクール、バンコク内のパブ、娯楽施設等の閉鎖(3月18日から2週間)、ソンクラン休暇(タイ正月)の延期、感染が発生している国・地域からの入国要件の厳格化等の対策が閣議により決定されている。

 

主な政府発表

  1. ・ 日本を含む感染例が多く見られる地域への渡航には、自粛要請が出ている。
  2. ・ 2月27日以降、保健省から、日本を含む感染例が多く見られる地域からの渡航者に対して、14日間の自宅等における症状の観察等の協力の要請が行われている。
  3. ・ 3月1日付で、新型コロナウイルス感染症は、感染病法上に基づく危険伝染病として指定された。当該指定により、事業所の所有者や管理者は、感染の疑いのある者が出た場合には、3時間以内に当局に届け出る義務を負うこととなった。また、当局が、感染の疑いのある者に対する検査の命令、市場、飲食店、工場、公共集会施設、教育機関等の一時閉鎖等の措置を取ることが可能となった。
  4. ・ 3月6日付で、韓国、中国(マカオ及び香港を含む)、イタリア及びイランが危険感染症地域に指定された。
  5. ・ 3月17日の閣議において、3月18日から2週間、大学、インターナショナルスクール、塾等の閉鎖、並びに、バンコク及び周辺県のパブ、娯楽施設、マッサージ店、映画館等の閉鎖が決定された。また、ソンクラン(タイ正月)の祝日(4月13日から15日)が延期されることとなった(振替日の日程は追ってアナウンスされる)。

 

渡航情報

  1. ・ これまでタイへの渡航は制限されていなかったが、3月11日付で、中国、韓国、香港及びイタリアに対するビザ免除措置の停止、及び、それらの国を含む19か国・地域の到着ビザの発行の停止が決定され、それらの国・地域からの渡航が事実上制限されることとなった。
  2. ・ 日本からの渡航は制限されていない。しかし、3月17日付閣議決定により、感染が拡大している国・地域からの入国に際しては、3日以内の医師の診断書を提示すること、当局が所在地を確認できるアプリケーションを利用すること、当局による検疫及び14日間の自己隔離に同意すること等が求められることとなった。

 

その他

  1. ・ 日本への渡航歴のあるタイ人感染者が日本への渡航歴を当初申告していなかった事案が発生し、当該感染者の対応が問題視されている。検査等の場面で渡航歴等の照会があった場合には、正確な申告を行う必要がある(危険伝染病に関して、医師に対して渡航歴を隠すことや虚偽の情報を伝えることは、2万バーツ以下の罰金の対象となる)。
  2. ・ タイの会社は、会計年度終了後4か月以内に年次株主総会を開催することが法律上求められているが、管轄当局である商務省から、期限内に開催できなかった場合には、開催後にその旨を文書で報告することを求めるアナウンスが行われた(期限内に開催できないことを事実上容認する趣旨のものであると解される)。
  3. ・ 労働保護福祉局から、労使に対する協力要請のための通達(感染のリスクがある又は隔離が必要と認められる従業員がいる場合には労働監督官に報告すること等を含む)が行われている。
  4. ・ タイの労働法上、祝日は各使用者が個別に定めて従業員に対してアナウンスするものであるため、ソンクラン休暇の祝日を延期する旨の政府決定の効果が各使用者に当然に及ぶものではない。政府決定に従ってソンクラン休暇を延期するか否かは、各事業者において判断することになる。

 

(ささき・しょうへい)

長島・大野・常松法律事務所バンコクオフィス代表。2005年東京大学法学部卒業。2011年 University of Southern California Gould School of Law 卒業(LL.M.)。2011年9月からの約2年半にわたるサイアムプレミアインターナショナル法律事務所(バンコク)への出向経験を生かし、日本企業のタイ進出及びM&Aのサポートのほか、在タイ日系企業の企業法務全般にわたる支援を行っている。タイの周辺国における投資案件に関する助言も手掛けている。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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