デジタル時代に合わせた不正競争防止法の改正議論の最新動向
(デジタルアイテムのデザインの保護強化等)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 後 藤 未 来
弁護士 隈 大 希
1 はじめに
近年、コロナ禍でのライフスタイル等の変容も相まって、社会・経済のデジタル化が加速し、ビジネスでのデータの集積・活用の重要性も一層高まっている。こうしたデジタル時代に適合した不正競争防止法(以下「不競法」という。)のあり方について、産業構造審議会知的財産分科会不正競争防止小委員会(以下「本小委員会」という。)において、法改正も含めた検討が進められてきた。昨年末には、それまでの検討内容を纏めた報告書(案)(以下「本報告書」という。)[1]が公表された。本報告書では、メタバース等で流通するデジタルアイテムのデザイン保護の強化を含め、具体的な法改正を見据えた提案がなされており、注目される。そこで、本稿では、本報告書で検討・整理された不競法の見直しの方向性について、主なポイントを紹介する。
2 デジタルアイテム等のデザインの保護強化
⑴ 現行の不競法の課題
近年、メタバース等のデジタル空間における多様なサービスが誕生するとともに、デジタル化されたグッズやアイテム(たとえば、アバターに装着させるファッションアイテム等)の経済取引が活発化している[2]。
そのようなデジタル化されたグッズやアイテムをめぐって、その形態・デザインの模倣が行われた場合に、現行の不競法上の形態模倣(不競法2条1項3号)として取り締まれるのか、以下の設例を用いて考えてみる[3]。
この記事はプレミアム会員向けの有料記事です
ログインしてご覧ください
(ごとう・みき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。
(くま・たいき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2017年東京大学法学部卒業。2020年東京大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第二東京弁護士会)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング
* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用