SH4293 意外に深い公益通報者保護法~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~ 第5回 従事者に関する運用上の留意点(5) 金山貴昭(2023/01/30)

組織法務公益通報・腐敗防止・コンプライアンス

意外に深い公益通報者保護法
~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~ 

第5回 従事者に関する運用上の留意点(5)

森・濱田松本法律事務所

弁護士 金 山 貴 昭

 

Q 通報者情報の共有上の留意点

 通報者を特定する情報をマスキング等秘匿化した上で社外取締役や監査役に報告する場合は従事者指定せずともよいでしょうか。

 

A 【ポイント】

通報者と特定する情報をマスキング等秘匿化することにより社外取締役や監査役が、通報者を特定する事項の共有を受けないのであれば、従事者に指定する必要はありません。ただし、「通報者と特定する事項」は、通報者の氏名や社員番号に限られず、通報内容であっても通報者を特定する事項に該当する場合もあるため、秘匿化の際には通報内容を含め慎重に検討することが必要です。

 

【解説】

1 従事者に指定すべき範囲

 法定指針は、従事者として指定する者について、「事業者は、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通報対応業務を行う者であり、かつ、当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達される者を、従事者として定めなければならない。」と定めています。そのため、社外取締役や監査役がこの要件を満たす場合には、従事者に指定しなければなりません。他方で、公益通報者を特定させる事項を秘匿することで、社外取締役や監査役に公益通報者を特定させる事項が伝達されない場合には、社外取締役や監査役はこの要件を満たさず、従事者に指定する必要はありません。

 今回は、報告を受ける社外取締役や監査役が、「公益通報対応業務を行う者」に該当するのか、また、どのような情報が「公益通報者を特定させる事項」に該当するのかについて解説します。なお、法定指針が規定する「内部公益通報受付窓口」「公益通報対応業務」「公益通報者を特定させる事項」については、本連載の第2回「事案ごとに従事者を指定する場合の従事者の指定範囲」の解説をご参照ください。

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(かなやま・たかあき)

弁護士・テキサス州弁護士。2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2019年テキサス大学オースティン校ロースクール(L.L.M.)修了。2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2019年テキサス州弁護士会登録。2021年消費者庁制度課(公益通報制度担当)、同参事官(公益通報・協働担当)出向。
消費者庁出向時には、改正公益通報者保護法の指針策定、同法の逐条解説の執筆等に担当官として従事。危機管理案件の経験が豊富で、自動車関連、動物薬関連、食品関連、公共交通機関、一般社団法人等の幅広い業種の危機管理案件を担当。

 

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