SH4294 個人情報保護委員会による補完的ルールの改正案――EU等から十分性認定により移転された個人データの仮名加工情報の取扱い 後藤未来/伊藤雄太(2023/01/31)

取引法務個人情報保護法

個人情報保護委員会による補完的ルールの改正案
――EU等から十分性認定により移転された個人データの仮名加工情報の取扱い――

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 後 藤 未 来

弁護士 伊 藤 雄 太

 

1 はじめに

 2019年1月23日、日本において個人情報の保護に関する法律(以下「法」という。)28条[1]に基づくEU指定[2]がなされ、欧州委員会もGDPR45条に基づく日本の十分性認定[3]を決定し、日本・EU間の相互の円滑な個人データ移転を図る枠組みが発効した。英国に関しても、2020年2月1日のブレクジット後、日本が上記EU指定を英国に対しても継続することを決定し、英国側もEUが日本に対して行った十分性認定の効果をブレクジット後も維持することを決定した。

 こうした十分性認定によりEUや英国域内から日本に移転される個人データについて、日本とEUの制度間に違いがあることを踏まえて、適切な取扱い等を確保する観点から、日本の個人情報保護委員会による補完的ルールが策定されている。この補完的ルールは、EUや英国域内から十分性認定により移転される個人データを受領する個人情報取扱事業者を拘束し、個人情報取扱事業者はこれを遵守する必要がある。

 2022年12月、この補完的ルールについて、これまで未解決であった「仮名加工情報」の取扱いに関して、以下の規定を盛り込む改正案が公表され[4]、意見募集に付された(募集期限は2023年1月27日まで)。

 

EU又は英国域内から十分性認定に基づき提供を受けた個人情報を加工して得られた仮名加工情報は、法第41条に基づき取り扱われることとする。加えて、当該仮名加工情報は統計目的のためにのみ取り扱われることとする。(略)

 

 本稿では、仮名加工情報に関する日本法とGDPRでの取扱いの異同を概観しつつ、今般の補完的ルールの改正案の概要を紹介する。

 

2 日本法とGDPRにおける仮名化された個人情報の取扱い

 ⑴ 日本法における仮名加工情報の取扱い

 「仮名加工情報」(法2条5項)は、2020年の法改正で新たに導入された概念であり、要するに、他の情報と照合しない限り特定の個人と識別することができないように加工された個人の情報を指す。たとえば、サブスクリプションサービスの登録者リストに含まれる個人情報(氏名、性別、生年月日等)について、氏名部分を記号化する等の加工を施した情報は、仮名加工情報となり得る。

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(ごとう・みき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。

 

(いとう・ゆうた)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2017年東京大学法学部卒業。2019年東京大学法科大学院卒業。2020年弁護士登録(第一東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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