公取委、「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する
独占禁止法の考え方」(案)の意見募集を開始
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 矢 上 浄 子
1 本ガイドライン案の公表の経緯・目的
近年、国内外で豪雨や猛暑等の異常気象が頻発し、大きな被害がもたらされている。世界気象機関(WMO)は、このまま温室効果ガスの排出が続けば、一層の気温上昇と異常気象の増加は避けられないと警告している。日本においては、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、温室効果ガスの削減のための調整が進められている。
企業においても、グリーン社会の実現に向けたさまざまな取組が模索されているが、企業間の取組が独占禁止法に抵触するのではないかという懸念が生じる場面が少なくない。そこで、このような企業の取組を競争政策の観点からも後押しするため、経済産業省は2022年3月に「グリーン社会の実現に向けた競争政策研究会」を立ち上げ、競争政策上の論点の洗い出しを行った。また、公正取引委員会(以下「公取委」という。)においても、2022年10月から12月にかけて「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関するガイドライン検討会」(座長・岡田羊祐一橋大学大学院経済学研究科教授)が開催され、同分野におけるガイドラインの策定を見据えた有識者による意見交換が行われた。
このたび公取委から公表された「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法の考え方」(案)(以下「本ガイドライン案」という。)は、このような検討・意見を踏まえて作成されたものであり、関係各方面からの意見を広く募るため、本年1月13日にパブリックコメント版として公表されるに至ったものである[1]。
本ガイドライン案の目的は、事業者および事業者団体(以下「事業者等」という。)によるグリーン社会の実現に向けたさまざまな取組について、独占禁止法上問題となる場合、ならない場合の具体的な想定例を示し、イノベーションを失わせる競争制限的な行為を未然に防止するとともに、独占禁止法の適用・執行にかかる透明性および予見可能性を高めることで、事業者等による取組を促進することにある。
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(やがみ・きよこ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2002年ニューヨーク州弁護士登録、2008年弁護士(第二東京)登録。主に独占禁止法・競争法、クロスボーダーM&A・ジョイントベンチャー、国際紛争等の分野でアドバイスを行う。神戸大学大学院法学研究科及び早稲田大学大学院法務研究科で非常勤講師を務める。プロボノ活動にも積極的に取り組む。
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