SH4349 中国:中国からの情報・データの越境移転に必要な安全評価申告の動向(中) 鹿はせる(2023/03/09)

個人情報保護法

中国:中国からの情報・データの越境移転に必要な安全評価申告の動向(中)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 鹿   はせる

 

(承前)

3 事前の安全評価申告が必要となる場合の手続

 上記2の①-④の要件に該当した場合、情報・データを越境移転させるための安全評価申告については、具体的には以下の手続を経る必要がある。

  1. (ⅰ) 越境移転データに関する自己評価の履行および報告書の作成。なお、評価項目としては、①データ移転の目的、範囲、方法等の適法性、正当性、必要性、②越境データの規模、範囲、センシティビティ、国家安全等に与えるリスク、③移転先が越境データの安全を確保する責任および能力、④移転によるデータの毀損等のリスク、権利保護の方法等、⑤移転先と締結したデータ越境に関する取決めおよびその十分性等が定められている(本弁法5条)。
  2. (ⅱ) 各省のサイバーセキュリティ部門に対して、申告書、上記(ⅰ)で作成した自己評価報告および国外の移転先と締結した法律文書を提出(本弁法6条)。
  3. (ⅲ) 各省のサイバーセキュリティ部門は(ⅱ)での申告資料を受領した日から5営業日以内に形式審査を行い、形式的な不備がない場合は申告を国家サイバーセキュリティ部門に転送(不備がある場合はデータ処理者にて修正・再提出)(本弁法7条)。
  4. (ⅳ) 国家サイバーセキュリティ部門は(ⅲ)での申告資料を受領した日から7営業日以内に受理・不受理に関する審査を行い、受理する場合は実質審査に移行。受理しない場合はデータ処理者にて修正・補充(本弁法7条、11条)。
  5. (ⅴ) 国家サイバーセキュリティ部門は他の関連当局と共に実質審査を行い、データ処理者に書面の受理通知を発送した日から45営業日以内に国外移転の可否について結論を下す(状況が複雑な場合は延長可能。延長期限の定めはない。)(本弁法10条、12条)。
  6. (ⅵ) データ処理者が上記(ⅴ)の結果に不服の場合は、評価結果を受領した日から15営業日以内に不服審査請求を行うことができる(本弁法13条)。

 以上に従えば、各省のサイバーセキュリティ部門によるデータ処理者からの安全評価申告の受領から原則57営業日以内に、越境移転のクリアランスが発出されることとなる(もっとも、上記(v)のとおり審査期間は延長可能とされている。)。

 また、クリアランスの期限は評価結果の発行日から2年間とされているため、当該期限を超えて対象となる重要データおよび個人情報の越境移転を続ける場合は、期限が到来する60営業日前までに再申告する必要がある。

 なお、クリアランスの期限中に当初の申告情報に変更がある場合(たとえば、データ越境移転の目的、方式等、国外の移転先によるデータ処理の用途、方式に変更があることにより越境移転されたデータの安全に影響を及ぼす場合、または個人情報および重要データの国外における保存期間を延長する場合)、改めて安全評価を申告する必要がある(本弁法14条)。

この記事はプレミアム会員向けの有料記事です
ログインしてご覧ください


(ろく・はせる)

長島・大野・常松法律事務所東京オフィスパートナー。2006年東京大学法学部卒業。2008年東京大学法科大学院修了。2017年コロンビア大学ロースクール卒業(LL.M.)。2018年から2019年まで中国大手法律事務所の中倫法律事務所(北京)に駐在。M&A等のコーポレート業務、競争法業務の他、在中日系企業の企業法務全般及び中国企業の対日投資に関する法務サポートを行なっている。

 

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

長島・大野・常松法律事務所は、約500名の弁護士が所属する日本有数の総合法律事務所です。企業法務におけるあらゆる分野のリーガルサービスをワンストップで提供し、国内案件及び国際案件の双方に豊富な経験と実績を有しています。

当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ、ジャカルタ及び上海に拠点を構えています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」及び「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携及び協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。

詳しくは、こちらをご覧ください。

 

タイトルとURLをコピーしました