SH4351 中国:中国からの情報・データの越境移転に必要な安全評価申告の動向(下) 鹿はせる(2023/03/10)

個人情報保護法

中国:中国からの情報・データの越境移転に必要な安全評価申告の動向(下

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 鹿   はせる

 

(承前)

5 本弁法の実務上の留意点

 ⑴ 安全評価申告義務の判断および実施

 安全評価申告義務の要件に関して、たとえば(移転する場合に申告が必要となる)「重要データ」は、本弁法19条に定義されているものの、その範囲は明確ではない。現状は自動車産業については「自動車データ安全管理若干規定(試行版)」[1]、それ以外の産業については2022年1月にパブリックコメントに付されている「情報安全技術・重要データ識別ガイドライン」[2]に依拠して判断するしかないが、これらの規定およびガイドラインも(実際に読んでみればわかるが)それほど厳密に規定されているわけではない。現状としては、企業の自己判断が難しい場合に、法律事務所等を用いていわゆるデータデューデリジェンス(以下「データDD」)を行わせ、安全評価申告が必要となる情報の有無を、外部専門家を通じて確認することが実務上行われている。

 安全評価申告が必要な場合も、3の(i)記載のとおり、申告に当たっては「越境移転データに関する自己評価(移転の目的、合理性、対象データおよび移転先の性質等本弁法所定事項)の履行および報告書の作成」が必要とされているが、法律事務所等外部専門家がデータDDの結果安全評価申告が必要と判断すれば、DD報告書の内容を用いて自己評価報告書を作成することとなる(当局の審査は、基本的にこの自己評価報告書のレビューとなる。)。

 ⑵ 一旦要件に該当すれば、全ての情報移転について安全評価申告が必要か

 本弁法の施行当初、一旦2の②「基幹情報インフラ運営者または100万人以上の個人情報を処理するデータ処理者」または2の③の「直近年度の1月1日から起算して、中国国外に10万人の個人情報または1万人のセンシティブ個人情報を提供したデータ処理者」にあたれば、何ら量的・質的な基準なく、国外に個人情報を提供する場合(たとえば1名分だけでも)、その都度安全評価申告が求められるかが議論となっていた。条文上は求められるように読まざるを得ないが、たとえば2の②および2の③の要件を満たす現地法人の人事異動に関する情報に関しても、海外親会社に報告するために逐一事前の安全評価申告が求められることになりかねず、実務上も負担が重いと思われたためである。

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(ろく・はせる)

長島・大野・常松法律事務所東京オフィスパートナー。2006年東京大学法学部卒業。2008年東京大学法科大学院修了。2017年コロンビア大学ロースクール卒業(LL.M.)。2018年から2019年まで中国大手法律事務所の中倫法律事務所(北京)に駐在。M&A等のコーポレート業務、競争法業務の他、在中日系企業の企業法務全般及び中国企業の対日投資に関する法務サポートを行なっている。

 

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