欧州データ保護会議、米国への個人データの域外移転に関する十分性認定に係るInformation Noteを採択
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 後 藤 未 来
弁護士 藤 田 琴
1 はじめに
欧州連合の「EU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation)」(以下「GDPR」)の下では、EEA域内で取得した個人データを域外に越境移転するためには、①「十分性認定」を受けた国等に対する移転、②標準契約条項(以下「SCC」)の締結等、所定の条件を満たす必要がある(GDPR44条以下)。
特に、EEAから米国への域外移転に関しては、十分性認定された「プライバシーシールド」が欧州連合司法裁判所により無効とされて以降(Schrems II判決)、SCCの締結等が要される状況が続いていた。これに対し、欧州委員会は、2023年7月10日、EUと米国間の新たな個人データ保護に関する枠組みである「データプライバシーフレームワーク(EU-U.S. Data Privacy Framework)」(DPF)について十分性認定を行った。これにより、DPFに参加する米国事業者への個人データの越境移転については、SCCの締結等の追加措置を要することなく可能となった。
この新たなDPFにかかる十分性認定に関し、EDPB(欧州データ保護会議)は、2023年7月19日、EUのデータ主体等のために当該DPFにかかる十分性認定の意義について明確化することを目的としたInformation Noteを採択した[1]。主な内容は以下のとおりである。
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以下では、GDPRの下での米国への個人データの域外移転に関する従前の経緯を振り返りつつ、上記EDPBのInformation Noteの内容を概観する。
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(ごとう・みき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。
(ふじた・こと)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2019年京都大学法学部中退(3年次修了後、法科大学院へ飛び級進学)。2021年京都大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第2東京弁護士会所属)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
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