☆フィリピン:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報) 坂下大(2020/04/24)

20204月23日
フィリピン:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報)

                                                                               長島・大野・常松法律事務所

弁護士 坂 下   大

はじめに

 当初5月6日までとされていた緊急事態宣言につき、大型連休以降も延長する可能性につき政府内で議論が開始されたほか、自治体の休業要請に応じない事業者に対しより強い措置を講ずる場合のルール作りが始まるなど、新型コロナウイルスの事業への影響は長期化・深刻化しています。多くの海外地域においては引き続き厳格な外出制限や営業禁止等のロックダウン措置が継続している一方、一部地域においては行動制限の軽減・解除に向けた議論が始まるなど出口戦略の模索も始まりつつあります。

 本記事では速報ベースで各国の方針や影響拡大状況の概要につきお知らせ致します。なお、本記事は感染拡大が続く間、不定期に配信していきたいと思いますが、同感染症の拡大状況については日々状況が変化している中、本記事の内容がその後変更・更新されている可能性については十分ご留意の上参照ください。本記事の内容は、特段記載のない限り、日本時間2020年4月22日夜時点で判明している情報に基づいています。

 

全体概況  死亡者:437人、感染者数(累計):6,599人(4月21日現在)

 フィリピンでは、3月17日よりマニラ首都圏を含むルソン全域に「強化されたコミュニティ隔離(enhanced community quarantine)」の措置がとられ、外出禁止やオフィス、商業施設の閉鎖が続いているところ(その他地域でも類似の措置あり。)、現時点では1日あたり100から200人規模での感染拡大が続いている。現在4月30日までとされているルソンにおける上記隔離措置については、4月23日頃に継続又は緩和の是非に関する何らかの政府発表がなされる見込みであると報道されている。

 

主な政府発表

  1. ・ 労働雇用省が、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえた柔軟な働き方に関するガイドラインを発表(3月4日)
  2. ・ 国内感染の増加を受けて、COVID-19アラートシステムをCode Red sublevel 1(5段階のうち上から2番目)に引き上げ(3月7日)
  3. ・ 大統領による公衆衛生上の非常事態宣言(3月9日発表)
  4. ・ 大統領によるウイルス対策の追加措置の発表、COVID-19アラートシステムを最高レベルのCode Red sublevel 2に引き上げ(3月12日)
  5. ・ 大統領府、官房長官によるウイルス対策の追加措置に関するメモランダム(3月14日)
  6. ・ ルソン全域(マニラ首都圏含む。)に「強化されたコミュニティ隔離(enhanced community quarantine)」の措置(3月16日)
  7. ・ 大統領による国内全土の災害事態宣言(3月16日)
  8. ・ 「強化されたコミュニティ隔離(enhanced community quarantine)」に関するガイドライン(3月18日)
  9. ・ COVID-19対策法(Bayanihan to Heal As One Act)に大統領が署名(3月24日)。向こう3か月間にわたり、大統領に一定の措置をとる権限が付与されている。
  10. ・ 「強化されたコミュニティ隔離(enhanced community quarantine)」の期間を4月30日まで延長(4月7日)

 

渡航情報

  1. ・ 3月22日より、全ての外国人へのビザ発給及びビザ免除措置が停止され、また既発行のビザも無効とすることが発表されている(フィリピン国民の配偶者及び子等の一定の例外を除く。また、既にフィリピンに滞在している外国人のビザは引き続き有効。)。これから外国人がフィリピンに入国することは原則としてできない状況にある。
  2. ・ 「強化されたコミュニティ隔離(enhanced community quarantine)」における外出制限により、マニラ首都圏を含むルソン地域からのフィリピン国民の出国は原則として不可。外国人は出国可能。ルソン地域以外の一定の地域にも類似の制約がある。

 

その他

  1. ・ 「強化されたコミュニティ隔離(enhanced community quarantine)」により、ルソン全域(マニラ首都圏含む。)において、以下の内容を含む措置がとられている。
  2. (ⅰ)原則として自宅からの外出は禁止
  3. (ⅱ)生活必需品の調達のための外出は、1家庭につき1人のみ可
  4. (ⅲ)生活に必要な一定の事業に従事する者等は外出可能
  5. (ⅳ)生活に必要な施設以外は閉鎖。ホテルは追加予約の受付禁止
  6. (ⅴ)タクシー、バス、MRT/LRT等の全ての公共交通機関は営業禁止
  7. (ⅵ)生活に必要な一定の事業を営む会社を除き、雇用主は、従業員に職場への出勤を要求してはならない
  8. ・ 上記隔離措置により、マニラ首都圏に拠点を有する現地企業は在宅勤務態勢へ移行することとなり、また企業活動関連の行政機能がスローダウンするなど(例えば一部の許認可関連の手続きは事実上機能停止している状況である。)、そのオペレーションに大きな影響が生じている。
  9. ・ 上記隔離措置の期間は、当初は3月17日から4月13日までとされていたが、4月30日までに延長されている。4月30日以降における上記隔離措置の継続又は緩和の是非に関し、4月23日頃に何らかの政府発表がなされる見込み。
  10. ・ ルソン地域以外の一定の地域(セブ州を含む。)においても類似の隔離措置がとられている。
  11. ・ 3月12日に、証券取引委員会(SEC)より、遠隔的手法(電話、ビデオ会議等)による株主総会開催に関するガイドラインが策定されている。
  12. ・ 2019年の年次報告書、計算書類のSECへの提出期限の延長が認められている(3月12日)。また、一定の条件の下で、これらを電子メールで提出することも認められている(3月26日)。
  13. ・ COVID-19対策法の施行規則により、金融機関その他ローン取引における貸主は、上記隔離措置期間中に期限を迎えるローンの支払について、遅延損害金等(元本について生じる利息を除く。)のペナルティを課することなく、30日間の猶予を認めるべき(隔離措置期間が延長される場合には猶予期間も延長される。)とされている。
  14. ・ 貿易産業省の回状(memorandum circular)により、住宅や中小企業に対するオフィス、商業施設の貸主は、上記隔離措置期間中に期限を迎える賃料について、利息その他の負担を課することなく、30日間の支払猶予を認め(複数回期限が到来する場合にはその最後のものから起算)、また隔離措置期間終了後6か月にわたり分割して支払うことを認めるべきとされている。

 

(さかした・ゆたか)

2007年に長島・大野・常松法律事務所に入所し、クロスボーダー案件を含む多業種にわたるM&A、事業再生案件等に従事。2015年よりシンガポールを拠点とし、アジア各国におけるM&Aその他種々の企業法務に関するアドバイスを行っている。

慶應義塾大学法学部法律学科卒業、Duke University, The Fuqua School of Business卒業(MBA)。日本及び米国カリフォルニア州の弁護士資格を有する。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

長島・大野・常松法律事務所は、約500名の弁護士が所属する日本有数の総合法律事務所です。企業法務におけるあらゆる分野のリーガルサービスをワンストップで提供し、国内案件及び国際案件の双方に豊富な経験と実績を有しています。

当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ及び上海にオフィスを構えるほか、ジャカルタに現地デスクを設け、北京にも弁護士を派遣しています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」及び「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携及び協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。

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